ガストバーナー危険浪漫譚 / 我々は隙だらけ

[1]
 「俺は心配になるとすぐに病院に行っちゃうけど、はやお君は体力あるし、自分で何とかしようとしすぎてある日ぽっくり逝っちゃいそうだね」とはるきちさんは言った。確かに。
 終わりを考えてみる。バンドは楽しいけれど、間違いなくいずれ終わる。誰かが不健康になって楽器を続けることができなくなったりするような、ある種真っ当な終わり方は仕方がないけれど、人間関係のこじれだったりでバンドが楽しくなくなるのは勿体無いなと思う。
 ガストバーナーは同じことを確認事項のように、「なんでバンドを、ガストバーナーをやっているんだろう」とよく話す。勿論メンバー間で多少の差異はあれど、1番に「楽しいから」がないとダメだよねという結論に落ち着く。認められたい欲求もあるし、なんだったらもうどうしようもないくらいチヤホヤもされたい。けれど認められたい欲求を第一に動くと、欲求の際限がないし、ずっと登り調子でないと自分の存在を肯定できないので、必ずどこかでガタが来てしまう。
 「楽しいか楽しくないか」という判断基準で動くことが僕らにとって大事だった。それはきっと、これまでメンバーがそれぞれ色んなバンドを経験したがゆえに導き出された単純な結論だった。

[2]
 ガストバーナーは隙だらけ。「隙」というのは非常に大事なものかもしれない。人によるけれど、僕は「完璧なもの」が至極苦手だったりする。それは、完璧なものに対して自分が入り込む余地がなかったり、解釈や楽しみ方を統一させられるような窮屈さからくるものだったりする。
 不思議なもので、完璧を目指しながら、隙があるものが大好きだったりする。「あぁ、人間っぽいな」とも思う。そういう意味ではガストバーナーは隙だらけで、型落ちのパーツでカスタマイズしながら山道を爆走している燃費の悪い車のような感じを受ける。
 でもその方がハラハラして面白いなと思ってしまう自分がいる。完璧な最新パーツで構築されて最適化された自動運転の車が山道を疾走するよりも、なんだか見応えがあるような気がする。頑張れー!と声をかけたくなってしまう。
 完璧を目指すけれど、隙だらけ。矛盾しているけれど、これが人間っぽくて良いな、と思っていた。ああやっぱり変なバンド!だなとも感じていた。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?