第10話 常識
食事を終え、休憩室に戻ってきたTK工房
現場のメンバーはそれぞれ甘い缶コーヒーを飲みながら雑談をしていた
大和「君さー、同い年だったよね?」
TK工房「はい」
大和「今まで何してたの?(笑)」
TK工房「いやー、実は大学受験に失敗して2浪したんですよ。そしてやっと入った大学も留年しました(笑)」
大和「2浪してまで、大学って行きたいもんなの?」
TK工房「行きたい、というか、他に道がなかったという感じですかねぇ。」
大和「高卒で就職もあるじゃん」
TK工房「いやー、それは親が許さなかったですね。親は両方とも高卒の自営業なので、自分たちと同じ苦労は味わわせたくないと言っていたので」
大和「ふーん。大学受からなかったってのは高校で遊んじゃったの?」
TK工房「まぁ、そうですねー。遊び呆けてましたね(笑)」
大和「やっぱクスリとか?」
(ク、クスリ!? )
TK工房「クスリっすか!?(笑)そんなことはしませんよ!」
大和「あれ?そうなの?シンナーくらいやらなかった?」
TK工房「いやいやいや、やってないっす!」
大和「そうかー、真面目だねー。シンナーくらい普通にやってたけどなー」
(この人ヤベー。普通に元ヤンだわ)
ふと、気づくと湯原が何やら険しい顔で紙を見ながらブツブツ言っている
大和「どしたの?」
湯原「いや、また後輩が問題出して来てて、答えを考えてんのよ」
直(シフト)が入れ替わる時に、次の直の作業員に申し送り書を書いて渡すことになっているが、どうやらその業務書類にクイズもつけて渡すのが流行っているらしい
大和「まだそれやってんの?好きだねー」
湯原「まぁ、でもこれは簡単だったわ。次のクイズ何にしよっかなー。」
TK工房「クイズならこれはどうです?」
と言いながら、TK工房は有名な問題を出した。
「ドクタースミスはアメリカのコロラド州立病院に勤務する腕利きの外科医。仕事中は、常に冷静沈着、大胆かつ慎重で、州知事にまで信頼されている。ドクタースミスが夜勤していたある日、緊急外来の電話がなった。交通事故の怪我人を搬送するので執刀してほしいという。父親が息子と一緒にドライブ中、ハンドル操作を誤り、谷へ転落。車は大破、父親は即死、子供は重体だと救急隊員は告げた。20分後、重体の子供が病院に運ばれてきた。その顔を見て、ドクタースミスはあっと驚き、茫然自失となった。その子はドクタースミスの息子だったのだ。
さて、ここで問題。交通事故にあった父子とドクタースミスの関係を答えよ。」
湯原「何これ??どういうこと??ひっかけ問題?」
松本「全然わかんね」
高野橋「え?意味がよくわからない。実の息子って話?」
TK工房「いや違います(笑)これ、全く普通の文章なんですよ。わかる人は普通にわかります」
大和「え、超簡単じゃん。」
TK工房「わかりました?」
湯原「待て!言うな!俺向こう行くから」
湯原が慌てて休憩室を出ていき、扉が閉まったのを見て、大和が答える
大和「母親だろ?」
TK工房「正解です!すごいすね!」
松本・高野橋「え?どうゆうこと?」
TK工房「これ、ドクタースミスが女性なんですよ。どこにも男性って書いてないのに、"腕利きの外科医、冷静沈着、大胆かつ慎重"とか言う言葉を見て勝手に男と思い込んでしまうんですよ」
松本・高野橋「はー、なるほど」
大和「なるほどねー。俺、そういう常識ないからね。超簡単だったわ」
(面白いなー。常識人はわからなくて、元ヤンにすぐわかる。常識の罠。てか、そもそも大和さん、地頭が良いんじゃないの?)
などと、思っていると湯原が休憩室に満面の笑みで戻って来た
湯原「答えわかった!生き別れた息子だろ!」
全員「違うわ!笑」
楽しい休憩時間が終了した
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