第12話 予想外の出来事
3週間が経ち、作業自体にはすっかり慣れたTK工房だったが
勤務時間の変化が非常に堪えた
工場を24時間稼働させるために、8時間づつの交代勤務
これはずっと朝なら朝、夜なら夜、という固定シフトではなく
朝を一週間→1日休み→夕方を一週間→1日休み→夜を1週間→2日休み→最初に戻る
というふうにグルグル作業者で回す、かなり過酷な仕事
(こんなんずっと続くと思うと正直頭おかしなるわ)
夜勤ウィーク終わりの最終日
松本「今日終わったら、一旦家で寝て、夜飲みに行くか」
TK工房「マジすか!よろしくお願いします!」
松本「お前らどうすんの?」
大和「行く行く」
湯原「ごめん、俺は家族サービスだわ」
松本「じゃあ3人で行くか」
最後の夜勤を終え、明け方、だるい体を押して寮に戻った
エントランスのドアをくぐると、同期の小倉(女子)が寮のロビーでグッタリしている
TK工房「あれ?小倉も夜勤だっけ?」
小倉「いや、違うねん。実は昨日、、、」
話を聞くと、昨夜仕事終わりに現場の作業者に飲みに連れて行ってもらったらしく、しきりに飲まされた挙句に、車でその作業者の自宅の前まで連れて行かれて、家に泊まって行けと執拗に迫られたらしい
ど田舎のため、車がないとどこにも行けず
ましてや見知らぬ地で、歩いて帰りますとも言えず
「とにかく寮に返してください」の一点張りで夜明けまで車の中で粘ったのだとか
やっと今朝、解放されて帰ってきてロビーで人事課長が来るのを待っているという
(そんなアホ、ほんまにいてんの!?)
後日、そのオジさんは即日クビになり、この話には箝口令が敷かれたということを小倉から聞いた
(一発アウトって、やっぱり社会は厳しいねんなぁ。こんなしょうもないことで人生終わりか。こんなド田舎の工場でオッサンになるまで働いて、首切られてこれからどーすんねんな)
この時に学んだ「社会は厳しい」は、あくまで立場の弱い人間に対してだけであり、権威のある人間には適用されない、ということをTK工房が知るのはまだ先のお話
サポートいただいたお金は、こんな僕を育ててくれた母ちゃんに還元したいと思います。