第18話 販社研修
販社の営業研修初日
大阪の本社ではなく、朝から電車で神戸に向かった
大阪から神戸に向かう電車は、阪急電車、JR、阪神電車の3本があり、3本とも東から西へそれぞれ並行して走っている
山沿いを走るのが阪急電車、海沿いを走るのが阪神電車、そして真ん中を走るのがJR
阪急電車は、映画にもなったほど、やはり客層が上品なのだが
阪神電車は、阪神タイガース外野スタンドのイメージそのままの客層である
残念ながら、販社は阪神沿線沿いということで、阪神電車を使うことにした
(あんたら朝からその格好でどこ行くねん?)
と突っ込みたくなる汚いおっさんも結構な割合で乗っていて
そういう人たちは尼崎駅付近で乗り降りしている
尼崎といえば、お笑い芸人ダウンタウンの故郷で有名な場所だ
色々臭いおっさんに挟まれながら、なんとか目的の駅に着くと、駅から10分ほど歩いたオフィス街の中に販社はあった
本社の綺麗さとはうって変わって、昭和感丸出しの建物
入り口の壁に掛かっている案内板で、オフィスは2Fであることが確認できた。
通用口入ってすぐ正面にある、古くて狭いエレベーターは使わずに横の階段で登った
2Fに着いてみると、まず目の前に喫煙スペースが堂々と設置されていた。簡易な仕切りで囲われているのだが、おそらく煙が漏れているんだろう。建物の内装全体がヤニで茶色く変色していた
その横を過ぎると、鉄の扉があり、プラスチックのプレートで社名が書かれていた。どうやらオフィスの入り口らしい。
本社との違いに驚くばかりだか、扉をあけて中へ入った
TK工房「おはようございます!」
オフィスの入り口で元気よく挨拶をすると、異常に毛量の多い白髪頭のおじさんが寄ってきて、小さな会議室に案内してくれた。
上背はないが体格はしっかりしていて、どことなく顔はロバートデニーロに似ている。
デニーロに導かれる会議室までの道すがら、オフィスの中を見回して見たが、まるで初期の島耕作に出て来るオフィスそのものの雰囲気で、陽川さんが言っていた通り、そこにいる社員は、ほとんどがおじさんおばさんだった。
最も若手と思しき人でも、おそらく30代後半だろう
会議室には古瀬がもう到着していて座っていた
デニーロ「ちょっとここで待っといてくれる?9時から朝礼があるからまた呼びます」
TK工房・古瀬「はい!」
TK工房「古瀬、今日は早いやんけ」
古瀬「いやー、土地勘全くないから、流石に余裕を見て寮出たわ」
古瀬はコテコテの関西人みたいな顔をしてるが出身は千葉の松戸
顔に似合わず標準語を話すところがまた良い
他愛のない話をしていると、陽川さんがニヤニヤしながら入ってきた
陽川「ようこそ現場へ」
TK工房・古瀬「おはようございます!」
陽川「どや?無駄に綺麗な本社とは全然ちゃうやろ?」
TK工房「全く雰囲気違いますねー」
陽川「まぁ、これが現場や。メーカーはモノ作るだけで、後は販社任せ。そのくせ、販社をバカにしとるからな。」
TK工房「え?そうなんですか?」
陽川「当たり前やんけ。本社で口ばっかり偉そうにして、誰も現場に来ようともせんやろ。出向になって来るやつ言うたら、使えんおっさんくらいや。あの藤岡さんみたいに」
TK工房「藤岡さん?」
陽川「さっき案内してくれた人おったやろ。白髪頭の。なんや、あのおっさん自己紹介もしとらんのかい」
TK工房「あー、あの人、出向者なんですね」
(残念、デニーロは使えないおじさんらしい)
陽川「お前ら今日から営業マンのかばん持ちするやろけど、しっかりビジネスの現場見とけよ。商品は作って売るところまでがビジネスなんや。どういう風に売ってるんか。売ってる人間は何を考えてるんか。そういうのをしっかり見てこい」
TK工房・古瀬「はい!」
つづく
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