第17話 出会い

産業品本部に本配属されたものの、新人はまず2週間、産業品本部の企画部に仮配属されるらしい

企画部は、部長と課長2名、課長代理2名、平社員3名、女性一般職が2名の10名で構成されていた

スラッと高身長の先輩が近づいてくる

東本「おはようさん。俺は東本って言います。君らのOJTを担当しますのでよろしく。」

TK工房・古瀬「よろしくお願いします!」

東本「この2週間はまず、販売子会社に張り付いて、営業マンの鞄持ちをしてもらうから。子会社は2種類あって、ゼネコン相手の代理店と、大衆消費財を扱ってる代理店に分かれてるから、両方1週間づつ張り付く形になるわ。前者はゴリゴリのBtoB、後者も基本はBtoBやけど、BtoCの理解も進むと思うわ」

(おー、なんかサラリーマンっぽい!!営業の現場を見れるわけやな。楽しみや。)

東本「とりあえず今日は一日座学を受けてもらうのでしっかり学んでくれ」

産業品本部は色んな商材があったので、各商品30分づつ、担当者から説明を受けるだけでも一日が終わるスケジュールになっていた

小さな会議室に案内され、古瀬とTK工房が着席

いかにも真面目そうな講師役の社員が次から次へと入ってきては、各々事業や商品の説明をしてくれる

初めは緊張して聞いてた二人だったが

3つ目くらいの説明から、ウトウトし出す始末

これが本当に面白くない

(こんなしょーもない部品作ってる仕事あんねんな!いやまぁ、あるやろけど、俺絶対嫌やこんな地味な仕事!)

という如何にも今時の若者らしい不安を感じ始めたTK工房

(ヤバイ。今んとこ、やりたいことないぞ。)

悶々と考えてるうちに、また扉が開き次の講師が入ってきた

ん?

今までの人と全然雰囲気が違う

リュック姿でイヤホン

てか、ガム噛んどる!!!

なんじゃこの人?

謎の人「おう。お前らが新人か。」

TK工房・古瀬「は、はい、よろしくお願いします!」

謎の人「もう今日は何回も聞いてるんやろ?しょーもない話」

(しょ、しょーもないて(笑)しょーもなかったけども!)

TK工房「いや、知らない話ばかりで面白かったです」

謎の人「嘘つけ!(笑)何がおもろいねん。貰った資料見せてみろ。・・・うわー、しょーもなー。もし俺が新人でこんな説明延々とされたら辞めるわ」

なんやこの人!?

オモロイやないか(笑)

謎の人「あ、言い忘れてたけど、俺は陽川(ひなかわ)って言うねん。お前らのためにわざわざ神戸から出張してきたわ。」

TK工房・古瀬「な、なんかすみません」

陽川「いや、こうでもないと本社来る機会ないからなー。追い出された身としては」

TK工房「追い出された?」

陽川「まぁ、それはおいおい教えたるわ。それより、先に今日の資料渡しとく。後で読んで、ポイントピックアップして日報に書いといて」

TK工房「え、あ、はい」

陽川「ほんでお前ら新卒てことは、23か?見えへんけど」

TK工房「僕二浪1留なんで26になります」

古瀬「僕は一浪1留、院卒なんで27になります」

陽川「もうオッサンやないか(笑)しかしお前らオモロイな」

TK工房「陽川さんは、何年目になられるんですか?」

陽川「あ、俺ここのプロパーちゃうから、社会人で何年目とかは忘れたわ。俺は今年で36やったかな?いわゆる就職氷河期世代や。だから、全然合わんわ。」

TK工房「全然合わない?」

陽川「この会社の人間とや。この会社のやつらしょーもないやつ多過ぎ(笑)」

こ、この人、とにかく口が悪いぞ、、、

やばい人なのかもしれない

陽川「ほんでお前ら何をやりたいねん?」

古瀬「僕は土木建築専攻だったのでインフラ関係やりたいです」

陽川「土木建築専攻やのに、うちの会社選ぶて、相当変わりもんやろお前(笑)」

古瀬「よく言われます(笑)」

陽川「お前は?」

TK工房「僕は、企画部が良かったので、今すごく嬉しいです!」

陽川「はぁ?企画部?企画部で何やるねん?」

TK工房「昔から、新しいことを作るのが好きで、アイデアもどんどん湧いてくるタイプなので新規事業を立ち上げたりしたいです!」

陽川「企画部て、そういうとこちゃうで(笑)」

TK工房「ええ!!??」

陽川「クリエイティブのかけらもないからな。そもそも企業における企画部ってのは雑用なんや。ほんで、偉そうに予算管理とか言うて、現場のこと一切知らない、知ろうともしない連中の集まりや。営業部からどんなけ嫌われとるか。もはや業務部っていう名前に変えた方がええくらいやぞ」

TK工房「そ、そうなんですか、、?新規事業とか立ち上げたりするんだと思ってました」

陽川「新規事業は営業部が立ち上げるもんや。ビジネスに触れてもない企画部が机上で立ち上げるもんちゃうねん」

TK工房「営業部の数字や市場環境などから分析して、営業に提案とかしたりしないんすか?」

陽川「ふーん、お前マーケティングとか出来んの?経営学部かなんか?」

TK工房「一応経営学部ですけど、5年間アメフトしかしてなかったので、全然わかりません」

陽川「わからんのかい(笑)ま、すぐに企画部がカスやってのは、わかるわ。俺がいてた頃は、月森さんて人もいて、最強の企画部と言われてたんやけどな。あの人も香港行ってもうたし、俺も子会社に飛ばされたしな」

(最強の企画部??笑)

TK工房「飛ばされたて、何でなんすか?」

陽川「リーマンショックや。それまで何もせずに昔の延長で、くっさい商売続けとるおっさんしかおらんかったから、バシバシ大ナタふるって事業整理進めたし、新しい取り組みもしてたんやけどな、あのショックのせいで見た目の成果はボロボロ。あくまで数字の上で下がってるだけで、組織や各事業は確実に正常化したんやけど、まぁアホにはそれがわからん。」

陽川「ほんで、一連の大ナタで恨みも買ってたから、報復で飛ばされたんやわ。本部長にも "君はもっとビジネスの現場で学んだほうが良い" とか言われてな。工場の技術屋でしかなかったやつが、誰に口聞いとんねんって感じやろ。」

(本部長は技術屋だったのか)

陽川「俺が氷河期世代で就職して、入った先でどんなドブ板営業やってた思とんねん。この会社の誰よりも苦労も経験もして、ビジネス学んどるっちゅうねん。」

陽川「飛ばされた先がまたしょーもない、昭和のくっさい組織でなー。十数年、新卒も採ってへんとこや。ま、だからこそやりがいがあって、俺が今メチャクチャに改造してるから、だいぶおもろなってきたけどな!お前ら明日から来るんやろ?また色々教えたるわ」

なんかわからんけど、この人は凄い人かもしれない!!!


続く


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