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第21話 新たな出会い
時間が過ぎるのは早いもので、大衆消費財営業マンの鞄持ち期間である1週間が終わった
一応1週間もはるばる大阪から神戸に通ったこともあり、最後の金曜日には打ち上げという名目で酒の席が設けられた
会社から10分程北へ歩き、JRの高架をくぐって生田ロードを北上すると、陣内智則と藤原紀香が結婚式を挙げたことで有名な生田神社に着く。
そのすぐ手前を右に曲がった所にある、「大関」が今回の会場となった。
なかなか年季の入った、昔ながらの大衆に親しまれる居酒屋だ。
店に入ると二階の畳の部屋に案内された
(座敷かよ。足痛いやん。)
昭和の雰囲気漂う黄ばんだ畳に、濃い紫の座布団
長テーブルにはビール瓶が並べられていた
TK工房と古瀬はそれぞれゲストとして、偉い人の正面座らされ、コップにビールを注がれる
TK工房の正面には子会社の社長の小田
左にはあの陽川さんが座っていた
全員のグラスがビールで満たされる頃、乾杯の挨拶が始まった。
挨拶はデニーロ似の藤岡がするようだ。
藤岡「今日は新人歓迎会ということで、皆様にはお集まり頂き誠にありがとうございます。何年振りの新入社員となりますでしょうか。久しぶり過ぎて少し、テンパっておりますが、、、」
周りから笑い声とヤジが飛ぶ
(何年振りって、毎年やってんじゃないの?)
たどたどしい挨拶がされてる中、2人遅れて社員が到着したようだ
ん?
入って来たのは、30半ばの課長代理と、初めて見る若い女性だった
え、あんな若い子いたっけ??
陽川「おー、お疲れさん。こっちの席空いてるわ。TK工房の横」
陽川さんの手招きに応じて、空いていた右側の席にその女性が座った
少しきつめの顔立ちで、雰囲気は桐谷美玲といったところか
TK工房「お疲れ様です。はじめまして、TK工房と言います」
金山「お疲れ様です。はじめまして新入社員の金山です」
TK工房「え?新入社員ですか?」
陽川「おう。そやねん。今年採ったんやわ。これから毎年採用しようと思ってんねん。第1号やな」
TK工房「え、こんな中途半端な時期に?中途採用ですか?」
金山「中途採用なんですけど、前の会社、2ヶ月で辞めたんでほぼ新卒です(笑)」
TK工房「マジすか!(笑)」
陽川「おう。優秀な子が採れたわ。大手証券に新卒で入って、さっさと見切りつけて辞めるあたり、根性も座っててええやろ」
TK工房「証券すか!バリバリすねー」
金山「いや、別にそんなんじゃないんですけどね」
TK工房「なんで辞めたんですか?」
金山「いやー、なんというか、私、もともと別に行きたいとこじゃなかったんですよねー。なんか就活テキトーにやってて、パッと決まって、めんどくさいからもうここでええかなって」
TK工房「いやー、テキトーにやって受かるとか凄い..」
金山「いや、ほんま何で受かったんかよくわからないんですよね。で、2ヶ月行ってみたけど、全然面白くないし、違うかなって。いや、営業とか面白かったんですけどね。まぁ、別にやりたいことちゃうなって思って」
TK工房「やりたいことって何なんですか?」
金山「なんか金融みたいに形ないものより、形あるプロダクトを世に出す、広める、みたいなことがしたいなって。」
TK工房「え、ほななんで証券うけたん?(笑)」
金山「いやだから、ほんまにテキトーやったんですって(笑)」
それでは、カンパーイ!!!
(あら、まだ乾杯の挨拶続いてたのね(笑))
各人がグラスに口をつけ
一瞬、間を置いてから拍手が起こり歓談に入った
テーブルの上には前菜のサラダの盛り合わせが出ていて、取り皿が横に積み上がっていたが、TK工房のテーブルではとりあえず皆、枝豆に手を伸ばしていた
金山「こういうのって、私が取り分けた方が良いんでしょうねぇ」
ボソっと金山が呟く
TK工房「いや、別にそんなことないでしょ。そもそもゲストですし」
金山「良いですかね。まぁ、やれって言われても出来ないんですけどね。普段合コンでも絶対やらないし。」
(オモロイ子やな)
陽川「そんなんせんでええよ。しょーもない。食べる奴がセルフで取ったらええ。」
自分で自分の分を取り始めた陽川。
それに続いて、社長も取り皿に手を伸ばし、順番を待ち始めた
(余計な気を使わないええ雰囲気やなー。古い雰囲気の会社やと思ったけど)
小田「TKさん、1週間の研修どうでしたか?」
社長の小田は、自分の取り皿にサラダを盛りながら話し始めた
つづく
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