第16話 本配属

6月1日、ついに本配属先に出社する日が来た

本社の始業開始は9時。新人らしく8時過ぎに到着するように家を出る

実家が大阪市内のため、通勤はドアドアでわずか20分ほどだ

地下鉄御堂筋線に乗り、すし詰め状態になること10分

雪崩のように、ホーム押し出されて改札を抜けた

駅から歩いて5分ほどのところに、16階建ての本社ビルがある。

社員通用口から入り、エレベーターホールに進む。

まだロビーの電気も薄暗い

既に8時15分を回っていたが、エレベーター前に並んでいる人影は想像以上に少なかった。

エレベーターのドアが開き、そこに乗り込んだ。

4階、5階と数人が降り、いよいよ産業品本部がある7階についた。

エレベーターを降りると、正面に摺りガラスのドアがある。


カードキーによるオートロックシステムになっているようだ。

社員証のIC認証でオフィスへの扉をあけた

扉を抜けるとすぐ左側の壁に、オフィスの簡易地図が貼られてあり

産業部品本部は入ってすぐ右手前と記載されてある

(もうすぐそこやな)

歩みを進め、先ほど確認した右手前に目をやると、まだ人は全然いない。


無人のデスクがずらっと並んでいる中に、一人、難しい顔でパソコンの画面をのぞき込んでいる白髪のおじさんがいた

大阪のオフィス街が一望出来る大きな窓を背にした上座に座っている

(いかにも偉い席やな)

TK工房 「おはようございます!」

白髪のおじさん「おう、おはよー。元気いいな。新人やな?」

TK工房「はい!よろしくお願いします!」

白髪のおじさん「私が本部長の福徳です。まだ早いからみんな来てないけど、どこか端っこの空いてる席に座っとき」

(この人が本部長か。真面目そうな人やなー。しかし、8時20分過ぎで社員があんまり来てないって、本社はそんなもんなんか?1時間くらい前には当然出社してないとあかんみたいな話をよく聞いてたけども、まぁ、楽でええわ。)

とりあえず空いてる席に座り、おもむろに鞄の中から手帳を出してカレンダーのページをぼんやりと眺めていた。

8時半を過ぎた頃から他の社員がバラバラと到着し始めた。

それに混じって、同期の古瀬も入って来る。

TK工房「お前なかなか根性座ってんな(笑)」

古瀬「え?何が?」

続く

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