第6話 工場研修スタート
いよいよ、工場研修の日を迎える
朝8:00に大阪の本社に集められた。
いつもの講堂に行くと、机や椅子は全て片付けられた状態だった。
そこにいつもの人事担当が立っていて、何やら大きい声で指示を出している。どうやら行き先の各工場ごとに班分けをし、チケットを配っているようだ。
山形工場での研修を言い渡されていたTK工房。交通手段は飛行機かと思いきや
新幹線のチケットを渡された
マジか
(何時間かけて行くんや?えらいケチ臭いなオイ)
TK工房と同じ山形工場行きが決まったのは、桜園や海津、古瀬を含む20人ほど。
山形工場は国内最大の工場ということで、送り込まれる人数も他の6工場に比べて若干多い
もちろん、山形までの道中は付き添いの先輩社員がいるわけでもなく、同期だけでワイワイ遠足気分で向かった
しかし山県はやはり遠く
朝8時台に出発して、目的地についたのは着いたのは夕方
駅に着くと、工場の専用バスが迎えに来ていた
そこからバスで15分行ったところに山形工場はある
山形工場に着くと、工場の人事課長に迎えられた
「長旅ご苦労さん。疲れてるところ悪いけど、今から工場長の挨拶があるから、失礼のないように」
山形工場は国内最大の工場ということもあり、ここの工場長は次期社長候補と言われている
メーカー出身者ならわかると思うが、工場というのは無駄に権力がある。
営業畑や人事畑なんかより遥かに権力があり、特に生産技術課などは出世コースだ。
この根底には、良い物作れば売れる→良い物作る工場が偉い→製品が売れないのは良い物を売ってこれない営業がしょぼいから。ましてや金を生まないコーポレートはカス。という考えがある。
間違いなく、これが日本の製造業を駄目にした根柢の考えだが、おそらくこれが変わることはない。
新入社員一同、大きな会議室で待っていると、非常にオーラのある
というか偉そうなおじさんが入って来た
本社でくだらない講義をたれてた役員達よりは、只者ではない感じが伝わってくる
その後ろをヘコヘコした課長陣が続き
全員が揃ったところで、工場長からの挨拶があった
挨拶の冒頭で
「国内最大の工場に来れた君達は運が良い」
と言われたのはとても印象的だった。その後も長々と話すことはなく、簡単な挨拶で終わり
(さすが時期社長と言われる人間は他の役員とはちょっと違うなぁ)という印象を持った
その後、課長陣も続いて何か挨拶をしていたが、工場長のインパクトにかき消されて、頭には何も残らなかった。
その後、そのまま懇親会ということで、その場にビールや食事が運び込まれて、立食形式で飲み食いが始まった
偉そうなおじさんと取り巻きに話を聞いたところで、語られる内容は想定内だろうなと考えたひねくれ者のTK工房は、少し離れた場所にいた白髪の爺さんにビールを注ぎに行った
話を聞いてみるとその爺さん
現場採用(高卒採用)されたたたき上げで、課長代理までのし上がったという
これはかなり凄いことらしい
(でも、どれだけ成果出しても、やっぱり現場採用じゃあ、課長代理止まりなんやなー)
と思いながら話を聞いていると
爺さん「俺はまだ課長狙ってるよ。それだけの実績もあるし、今も本社の奴らなんかにゃ負けないくらいやってる。このままじゃ終われんよ」
爺さんカッケー!
「まだだ!まだ終わらんよ!」を現実に言う人間がいるとは
(てか、この爺さん、見るからに爺さんやのにまだ定年してないとか、意外と50代かよ。どんなけ苦労してきてん)
そして懇親会もお開きになり、全員で後片付けをした後
工場のすぐ隣にある独身寮に歩いて移動
工場は田舎にあるため、日が暮れると本当に真っ暗になり、ポツンポツンと立っている街灯がだけが頼りになる
人事課長に先導されるまま林の中を進むと、歴史ある古臭い建物の前についた。
入り口には「青雲寮」と書いてある
(ここにこれから1ヶ月お世話になるんかぁ)
つづく
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