逃避

広い広い図書館

二十代であろう男女がこともコーナーで絵本を探していた。

そこには四、五歳くらいの男の子がいた。

その男の子は年齢に見合わないほど知的な顔立ちをしていた。

近づいてきて、

「こっちの方が怖いよ」

と絵本を渡してきた。

渡してきた絵本は
とても四、五歳が勧めてくるような絵本ではなかった


表紙には飛び散る血の色をしていた。

怖くなって男と女はその男の子を無視した。

男は咄嗟に

「こっちの方が怖そうだよね」

と震える声で女に尋ねた。

それは可愛らしいお化けが描かれた絵本だった。

無視された男の子は怒ったのか二人の後をずっと追いかけてきた。




そこはレストランだった。

天井にはシャンデリア、

テーブルや椅子には白と金で豪華な飾り付けがしてあった。

その店はとても繁盛していたらしい。

満席で座っている人たちは富豪か何かなのだろう。

着飾るものは全てブランド品であり、

男女二人が入ってきても見向きもせず

食事をし続け、談笑をしていた。


男女二人は先程の不気味な子供から逃げてやってきたようだが、

後ろから追ってくるのは黒のスーツを着た男性だった。


捕まってはならないと理解した二人は

周りのテーブルを掻い潜るように逃げ、目の前の扉を開けた。




次の部屋は映画館だった。

黒と赤を基調とする空間でそこには誰も座っておらず、とても映画が始まるようではなかった。


まだまだ黒のスーツを着た男性が追いかけてきた。

向かいの赤い何枚もの扉を開けた。








2023/08/26


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?