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闇暦戦史

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【無料マガジン】 私の代表作にしてダークファンタジー小説大系『闇暦戦史』を総括収録したマガジンです。
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記事一覧

はじめに

 このマガジンはダークファンタジー大系小説『闇暦戦史』を一括収録したものになります。  …

凰太郎
3年前
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作品紹介:孤独の吸血姫

【作品紹介】 人類が支配権を失い、魔界より顕現した〈怪物〉達が覇権を狙った戦乱を繰り広げ…

凰太郎
3年前
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孤独の吸血姫:~序幕~黒霧の魔都

 ──闇暦三〇年、イギリス・ロンドン。  人類による支配権が失われた〈闇の時代〉に於いて…

凰太郎
3年前
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孤独の吸血姫:~第一幕~鮮血の魔城 Chapter.1

 テムズ川沿いに格調高い貫禄を誇示する城塞〝ロンドン塔〟は、旧暦時代からイギリスの自尊的…

凰太郎
3年前

孤独の吸血姫:~第一幕~鮮血の魔城 Chapter.2

 正面入口から直結した大回廊。その空間は仰ぎ見るに天井高く、また所要面積も徒に広い。幾多…

凰太郎
3年前

孤独の吸血姫:~第一幕~鮮血の魔城 Chapter.3

「んーーっ! 肩が凝ったわ!」  自室へ戻るなり、カーミラが清々しく伸びをする。凛然とし…

凰太郎
3年前
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孤独の吸血姫:~第一幕~鮮血の魔城 Chapter.4

 不気味な静けさが漂う濃霧の街路。  陰気な月明かりに照らされた居住区画で、その人影は幽鬼の如く浮かび現れた。  艶やかな黒髪が腰丈まで流れ、肌の褐色は生気溢れる濃さに染まっている。黒衣の長外套で身を包み、四肢や胸元には見るからに呪具性を帯びた装飾具。口元をヴェールで覆い隠し、それ故か眼力を宿した赤い瞳は一層印象深く覗いていた。  名を〝魔女ドロテア〟と言う。 「……臭うな、死が」  油断ならない狡猾な瞳が、周囲の光景を観察に滑る。  不鮮明な直感へ誘われるように、魔女は路地

孤独の吸血姫:~第一幕~鮮血の魔城 Chapter.5

「どうした? 何を泣いておる? ん?」  泣きじゃくる少年を、ジル・ド・レは優しく宥めた…

凰太郎
3年前
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孤独の吸血姫:~第一幕~鮮血の魔城 Chapter.6

 招かれざる客人〝カリナ・ノヴェール〟が滞在して、二日後──。 「いまこそ、討って出るべ…

凰太郎
3年前
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孤独の吸血姫:~第一幕~鮮血の魔城 Chapter.7

「ええい、忌々しい!」  生来の癇癪に支配されるまま、エリザベートは喚き散らす。  進展見…

凰太郎
3年前
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孤独の吸血姫:~第一幕~鮮血の魔城 Chapter.8

「なんだ、食べてないのか?」  自室へと戻ったカリナは、卓上の配膳を見て拍子抜けした。  …

凰太郎
3年前
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孤独の吸血姫:~第二幕~白と黒の調べ Chapter.1

 ロンドン塔在城五日目──さすがのカリナも退屈と鬱憤が溜まってきていた。  仕方なしとば…

凰太郎
3年前

孤独の吸血姫:~第二幕~白と黒の調べ Chapter.2

 ロンドン・シティ居住区──巨眼の月光に浮かび上がるは、旧暦中世を彷彿させる街並みであっ…

凰太郎
3年前
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孤独の吸血姫:~第二幕~白と黒の調べ Chapter.3

「チクショー! どうしてオイラは、こうなんだよ!」  リック少年は自らの不運を呪った!  死に物狂いで街路を駆け抜ける!  振り返ると、追っ手の三人組は加虐心に漲っていた。  居住区を見回り警護する衛兵──即ち〈下級吸血鬼〉だ。 「待てよ! ボウズ!」 「オレ達ァ、オマエ等〈人間〉を守ってやってるんだぜ? 少しは御褒美があってもいいだろうが……へへへ!」  要するに「オマエの血を吸わせろ」という事だが、冗談ではない。  そもそも、対デッド警護は無償政策だ。 「オイラ〝血税〟な