労働判例を読む#336
今日の労働判例
【旭川公証人合同役場事件】(旭川地判R3.3.30労判1248.62)
※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法)
※ 司法試験考査委員(労働法)
※ YouTubeで3分解説!
https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK
この事案は、公証人である使用者Yが従業員Xに対して執拗にメッセージを送信するなどのハラスメントを理由に損害賠償を請求した事案です。裁判所は、Yの責任を認めました(慰謝料22万円)。
なお、退職勧奨の違法性(違法性否定)や退職の有効性(有効)も問題になりましたが、検討を省略します。
1.実務上のポイント
執拗にメッセージを送っていたからといって、その期間は3か月程度です。
けれども裁判所は、Yが実際にXを食事に誘って断られた時点で自分の言動がXにとって「迷惑であり、性的な嫌悪感を含む精神的苦痛を生じさせるものであることを認識し得た」と認定しています。予見可能性(予見義務違反)があった、という趣旨のように思われます。
それにも関わらず執拗に、不当な内容と認識しながらメッセージを送り続けたことから、「許容される限度を超えて、原告に対する精神的苦痛を与えた」「人格権を侵害する」と評価しています。回避義務違反があった、という趣旨のように思われます。
Yは、これはやばいと思ったのか、3ヶ月経った頃からメッセージの送信を止め、そのために賠償金額も小さいものになったのかもしれませんが、不快に思われるメッセージを送信し続けたことだけで、しかも相手に不快な思いをさせているかどうかについて明確な認識を必要としない(義務違反さえあればよい)で、その責任が法的にも認められた、ということは重大なこととして受け止める必要があります。
※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。
※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!
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