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労働判例を読む

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#労災

労働判例を読む#587

今日の労働判例 【国・渋谷労基署長(カスタマーズディライト)事件】(東京地判R5.1.26労判1307.5)  この事案は、レストランなどを経営する会社Kで、調理やマネジメントを担当していた従業員Xが、業務上のストレスによってメンタルを病み、労災認定されましたが、労基署Yの認定した補償金額が小さいとして訴訟を提起したものです。  裁判所は、Xの主張を認めて、労基署の処分を取り消しました。これを受けて、Yは補償金の支給決定をやり直すことになります。 1.固定残業代制度の有効

労働判例を読む#546

※ 元司法試験考査委員(労働法) 今日の労働判例 【国・むつ労基署長(検査開発)事件】(東京地判R5.1.26労判1297.136)  この事案は、放射線管理業務に従事していた高齢の従業員Xが、❶うつ病に罹患したのは業務に因るとして労災申請をしたところ、❷労基署Yがこれを却下した(R2.10.26)ため、❸労災補償保険審査官にこの見直しを求める審査請求をした(R3.4.30)ところ、❹労審法8条1項の定める期間(3ケ月)を経過した後の審査請求であって不適法であるとして、こ

労働判例を読む#540

※ 元司法試験考査委員(労働法) 【国・中央労基署長(クラレ)事件】(東京高判R3.12.2労判1295.94)  この事案は、海外勤務の従業員Kが海外で自殺した事案です。労災の受給資格があるのかどうか、労災保険法3条1項の「適用事業」に該当するのかどうか、が問題となり、労基署Yは適用事業に該当せず、Xに受給資格がない、と判断しました。これを不服とするKの遺族Xが、適用を求めて訴訟を提起しました。  1審(東京地判R3.4.13労判1272.43)に続き2審も、Yの判断を

労働判例を読む#515

※ 司法試験考査委員(労働法) 【地公災基金熊本県支部長(農業研究センター)事件】(熊本地判R5.1.27労判1290.5)  この事案は、実際に豚の飼育をしながら、飼育方法などを研究していた施設Kに勤務していた職員Aが、敗血症によって死亡したが、Aの遺族が、これは豚から人間に感染するロドコッカス・エクイ菌によるものであり、業務上の疾病であると主張して、労災の支給を求めたのに対し、労基署Yは、Aが元々有していた素因(免疫対価状態)が原因であって、業務起因性(因果関係)が認

労働判例を読む#513

※ 司法試験考査委員(労働法) 【国・広島中央労基署長(アイグランホールディングス)事件】(東京地判R4.4.13労判1289.52)  この事案は、会社Kでの経理部長Xが仕事を原因に精神障害を発病した(この点は特に争いがない)ものの、労災給付金について、労基署Yが、Xを管理監督者と評価し、残業時間に相当する分の時間を考慮せずに給付基礎日額を決定したため、給付金を少なく支給したとして、労災の支給決定の取消(≒再計算)を求めた事案です。  裁判所は、Xの請求を認めました。

労働判例を読む#503

※ 司法試験考査委員(労働法) 【国・北九州東労基署長(TOTOインフォム)事件】(福岡地判R4.3.18労判1286.38)  この事案は、システム開発に関わる従業員Xが、うつ病・不安障害を発病したために休職し、復職後しばらく勤務した後、再度、うつ病・不安障害を発病して休職・退職した事案で、労基署Yが労災に該当しないと認定した事案です。Xは労災に該当するとしてYの判断の取消しを裁判所に求めたところ、裁判所は、Xの主張を認めYの認定を取り消しました。 1.判断枠組み  

労働判例を読む#498

今日の労働判例 【国・渋谷労基署長(山本サービス)事件】(東京地判R4.9.29労判1285.59)  本事案は、介護サービスを提供する会社Kで勤務する介護士L(昭和21年生)が、会社の業務と同時に、個人の業務として、1週間、住み込みの看護をしました。これは、住込みの看護を行っていた者が1週間不在のためにその間の住込み介護をLが依頼されたため、一日のうちの数時間はYの業務として介護を行い、残りは個人の業務として住込みで待機・業務を行う、というものです。ところがLは、この住込

労働判例を読む#497

今日の労働判例 【国・札幌中央労基署長(一般財団法人あんしん財団)事件】(東京高判R4.11.29労判1285.30)  この事案は、従業員が精神障害を発症させたことが、労災に該当すると労基署Yが判断し、労災支給処分を命じたことに対し、使用者である財団Xが、この労災支給によってXの支払う労災保険料が高くなってしまう、したがって労災支給の命令の取り消しを求める立場にある(当事者適格がある)、という理論を前提に、労災支給処分の取り消しを裁判所に求めた事案です。  1審は、Xには

労働判例を読む#475

※ 司法試験考査委員(労働法) 今日の労働判例 【国・川越労基署長(サイマツ)事件】(東京地判R3.4.5労判1278.80)  この事案は、中小企業の事業主として、労災保険の特別加入者となっているXが、仕事で使う自動車を選ぶために中古車販売業者を訪ねた帰りに交通事故に遭った事案で、労基署Yは、労災に該当しない、と判断しました。これを不満として、Xは労災の支払いを求めたところ、裁判所はXの請求を認めました。 1.特別加入  特に注目されるのは、特別加入制度です。  中小

労働判例を読む#463

【国・天満労基署長(大広)事件】(大阪地判R4.6.15労判1275.104) ※ 司法試験考査委員(労働法)  この事案は、写真の専門家から、さらにマーケティングプランナーと業務の幅を広げてきたKが、自宅で自殺したため、遺族Xが労災申請したところ、労基署Yが非該当と判断したため、Yの判断を取消すよう訴訟を提起した事案です。裁判所は、Xの請求を否定しました。 1.労働時間  注目されるのは、労働時間の認定です。  Xは、仕事に関連する作業をしている時間は労働時間である、

労働判例を読む#457

【丸八ガラス店(求償金請求)事件】(福岡高判R3.10.29労判1274.70) ※ 司法試験考査委員(労働法)  この事案は、労災を認定して支払った労働基準監督署(国)Xが、労災を負った従業員の派遣先の会社(丸八ガラス店)Yに対し、事故防止義務を怠ったとして求償した事案です。1審2審は、いずれも、そもそもそのような義務が発生しない、としてXの請求を否定しました。 1.第三者への求償  本事案では、労災保険法12条の4が適用されるかどうかが問題になりました。馴染みのない

労働判例を読む#454

【国・名古屋北労基署長(ヤマト運輸)事件】(名古屋地判R2.12.16労判1273.70) ※ 司法試験考査委員(労働法)  この事案は、自殺した従業員Kの遺族Xが、労災認定を否定した労基署Yの判断に納得できず、労災認定するように求めた訴訟です。裁判所は、Yの決定を覆し、Xの請求を認めました。 1.労働時間  注目されるポイントの1つは、労働時間です。  厚労省の労災認定基準(裁判所も、この基準を原則的なルールとしています)では、職場のストレスが「強」であることが労災認

労働判例を読む#140

【国・熊本労基署長(ヤマト運輸)事件】 熊本地裁R1.6.26判決(労判1210.19) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、ヤマト運輸のセールスドライバーがくも膜下出血により死亡したところ、労基署Yが労災と認定しなかったため、遺族Xが、Yの労災適用外の認定の取り消しを求めた事案です。裁

労働判例を読む#131

【国・伊賀労基署長(東罐ロジテック)事件】 大阪地裁平30.10.24判決(労判1207.72) ※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、従業員Xがパワハラによって精神障害が発病したとして、労基署Yに対して労災の支払いを求めたものです。裁