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労働判例を読む

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#更新拒絶

労働判例を読む#584

今日の労働判例 【司法書士法人はたの法務事務所事件】(東京高判R4.9.12労判1306.52)  この事案は、正社員の募集に応じて入社したが、事務所Yから、雇用期間1か月の有期契約の雇用契約書を提示され、それにサインした従業員Xが、(1回は更新されたものの、2回目について)期間満了を理由に更新拒絶された(退職願いへのサインを強要された)事案です。  裁判所は、Xの主張を大幅に認めました。 1.契約内容  形式だけ見れば、募集資料は契約に関係なく、契約内容は契約書に示され

労働判例を読む#578

今日の労働判例 【アメリカン・エアラインズ事件】(東京地判R5.6.29労判1305.29)  この事案は、アメリカの航空会社の日本支社Yで雇われていた従業員Xが、コロナ禍での業績悪化などによって、定年後再雇用されなかった事案です。  Xは、これまで数多くの従業員が再雇用されてきたことなどを理由に、従業員の地位にあることの確認などを求めましたが、裁判所はXの請求を否定しました。 1.就業規則  ここで注目されるポイントの1つは、労契法の規定や権利濫用などの議論に先立ち、Y

労働判例を読む#572

今日の労働判例 【エイチ・エス債権回収事件】(東京地裁R3.2.18労判1303.86)  この事案は、大手金融機関(X退職時の社員数1万人弱)で定年退職までの10年間監査業務にかかわっていた従業員Xが、定年退職後に監査業務担当として、債権回収会社Y(X勤務時の従業員数50~60人)に、66歳で雇用されたものの、(70歳以降も勤務していた従業員がいるにもかかわらず)69歳で更新拒絶されたため、更新拒絶が無効であるとして、従業員の地位にあることなどを求めた事案です。  裁判所

労働判例を読む#528

※ 元司法試験考査委員(労働法) 【グッドパートナーズ事件】(東京高判R5.2.2労判1293.59)  この事案は、派遣の介護士Xが、就職1年目で会社Yに更新拒絶され、この更新拒絶が無効であると争った事案です。更新拒絶が明示されたのは1回だけですが、1回目の更新拒絶が無効となれば、再度、2ヶ月の契約が成立しますので、その満了時に2回目の更新拒絶があったかどうかが問題となりました。  1審は、Xの請求のうち、2回目の更新拒絶までの間の賃金請求などを認めました。  2審も、

労働判例を読む#512

※ 司法試験考査委員(労働法) 【コード事件】(京都地判R4.9.21労判1289.38)  この事件は、会社Yに、3か月の試用期間としての勤務後に、期間1年の有期契約を締結していた従業員Xが、1回契約更新された後、他の従業員からの苦情(職務怠慢など)があった、同様のことがあれば更新拒絶もあり得る、等と注意を受け、さらにその後、コロナ禍で休業(100%支給)とされ、会社業績の急激な悪化等を理由に、更新拒絶をされた事案です。  Xは、Yによる更新拒絶が無効であると主張し、Y

労働判例を読む#505

※ 司法試験考査委員(労働法) 【ケイ・エル・エム・ローヤルダッチエアーラインズ(雇止め)事件】(東京地判R5.3.27労判1287.17)  本事案は、オランダの航空会社Yに有期契約(5年上限)で雇われた乗務員Xらが、無期契約に転換した、等として雇用契約の存在確認と賃金の支払等を求めて訴訟を提起した事案です。裁判所は、Xらの請求の一部を認めました。 1.更新の上限の有効性  論点の1つが、更新の上限を定めることの有効性です。5年を超えない、という上限は、有期契約を5年

労働判例を読む#504

※ 司法試験考査委員(労働法) 【田中酸素(継続雇用)事件】(広島高判R2.12.25労判1286.68)  この事案は、会社Yを定年退職した従業員Xが、暫定的な条件下で再雇用され(19万円/月、~H29.2.28)、再雇用の条件を会社と交渉し、さらにこの期間を延長して(~H29.3.31)交渉を継続したものの、合意が成立せず、Yに更新拒絶された事案です。Xは、再雇用期間中の給与が19万円/月よりも多額であること、更新拒絶が無効であること(したがって、雇用関係が継続してい

労働判例を読む#501

【国立大学法人東北大学(雇止め)事件】(仙台高判R5.1.25労判1286.17)  この事案は、大学職員の業務を通算8年間行った従業員Xが、大学Yによる更新拒絶を無効として争った事案です。2審も、1審と同様にXの請求を否定しました。 1.実務上のポイント  1審と同様の判断が示されたので、そこで指摘したポイントは同様に維持されています。なので、「国立大学法人東北大学(雇止め)事件」(仙台地判R4.6.27労判1270.14、労働判例読本2023年版161頁)も合わせてご

労働判例を読む#483

※ 司法試験考査委員(労働法) 今日の労働判例 【日本通運(川崎・雇止め)事件】(東京高判R4.9.14労判1281.14)  この事案は、無期転換(5年超過)直前に雇止めされた有期契約者Xが、会社Yに対して、雇止めが無効であると主張した事案です。1審2審いずれも、Xの請求を否定しました。  同じ会社の、同様の雇止めに関し、同様の判断(原告の請求を否定)をした高裁判決(「日本通運事件」東京高判R4.11.1労判1281.5)が参考になりますので、ここではその参考判例と対比

労働判例を読む#482

※ 司法試験考査委員(労働法) 今日の労働判例 【日本通運事件】(東京高判R4.11.1労判1281.5)  この事案は、5年10か月・7回契約更新してきた有期契約社員Xが、会社Yによる更新拒絶を無効と主張した事案で、1審2審いずれも、Xの請求を否定しました。無期転換に関する労契法18条が導入後間もないため適用されない事案です。 1.判断構造  1審では、大きく2つの問題を検討していますが、2審は、そのうちの1つの問題について言及していません(下記①)。 ① 自由な意思

労働判例を読む#478

※ 司法試験考査委員(労働法) 今日の労働判例 【グッドパートナーズ事件】(東京地判R4.6.22労判1279.63)  この事案は、派遣の介護士Xが、就職1年目で会社Yに更新拒絶され、この更新拒絶が無効であると争った事案です。更新拒絶が明示されたのは1回だけですが、1回目の更新拒絶が無効となれば、再度、2ヶ月の契約が成立しますので、その満了時に2回目の更新拒絶があったかどうかが問題となりました。  裁判所は、Xの請求のうち、2回目の更新拒絶までの間の賃金請求などを認めま

労働判例を読む#464

【スタッフマーケティング事件】(東京地判R3.7.6労判1275.120) ※ 司法試験考査委員(労働法)  この事案は、家電量販店の販売業務を行っていた従業員Xが、会社Yから更新拒絶されたことが無効であると争った事案で、裁判所は更新拒絶を無効と判断しました。 1.更新拒絶の判断  裁判所の判断は、労契法19条の規定に沿ったもので、①更新の期待があること、②更新拒絶の合理性が無いこと、の2つの論点を順番に検討しています。  ここで特に注目されるのは、①②いずれも、最近の

労働判例を読む#451

【学校法人専修大学(無期転換)事件】(東京高判R4.7.6労判1273.19) ※ 司法試験考査委員(労働法)  この事案は、専修大学Yの語学担当の非常勤講師Xが、有期契約での勤務が5年を超過したために無期転換を申し込んだところ、Yがこれを拒んだため、無期契約者であることの確認などを求めて争った事案です。1審に続き2審も、無期転換を認めました。 1.実務上のポイント  通常、有期契約が更新され、雇用期間が5年を超えれば無期転換されるのですが(労契法15条1項)、「科学技

労働判例を読む#442

【学校法人河合塾(雇止め)事件】(東京高判R4.2.2労判1271.68) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、予備校講師Xが、生徒のアンケートなどに基づく人事考課が悪いことを理由に担当コマ数を削減した契約更新を、予備校Yから提案されたところ、それに不満があるために拒絶したところ、契約更