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人権は決してトレードオフにできない。入管法「改正」と刑法改正法案に関する国会審議をめぐって、政治家にお願いしたいこと。

刑法性犯罪規定改正への思い


5月30日、刑法性犯罪規定の改正案が衆議院を通過しました。

私たちは被害当事者の皆さんと一緒にこの問題に長年取り組んできたので、とても感慨深く思っています。

法務省への署名提出

主な改正は、
🍄不同意性交等罪への罪名の変更
🍄性交同意年齢の引き上げ
🍄性的姿態の意に反する撮影行為の処罰
 まだまだ課題は多くありますが、被害者の声を受けて被害者が泣き寝入りさせられてきた性被害について、きちんと性犯罪として問えるように規定が改正されようとしてるのです。
 Yahooニュースに以下の通りコメントしました。

日本ではこれまで強制性交等罪の成立には、暴行・脅迫、心神喪失・抗拒不能という要件が求められ、その立証のハードルが高いために多くの被害者が泣き寝入りを余儀なくされてきました。 2017年に110年ぶりに刑法性犯罪規定の改正がなされましたが、この点が手つかずであったため、法制審議会での検討が進められました。 諸外国では2017年の#Metoo運動が広がる中、同意のない性行為を性犯罪とする法改正が進んでおり、日本でも2019年の4件の無罪判決も契機となり、国際水準の法改正を求められてきました。不同意性交等罪の導入や性交同意年齢の引き上げは、被害者の方々の地道な改正運動やフラワーデモなどの動きが政治を動かした結果と言えます。 ジャニーズ事務所の性被害など日本には隠された性被害が数多くあり、若者に深刻な心の傷を与えています。本改正が実現し、一人でも多くの被害が救済される運用が進むことが期待されます。

Yahoo


 詳細は、成立時にまとめて解説したいと考えていますが、私自身、理不尽な司法のあり方を前に、一緒に涙を流した クライアントの方お一人お一人に報告したい思いです。まだ足りないけど多くの被害者の思いが反映された改正そして、付則や付帯決議が採択されたと評価できます。
 本件では自民党ワンツー議連を始め、超党派の議員の方々に本当に心を寄せていただき、心から感謝しています。
 是非今国会で成立してほしい、そしてまだ、衆議院では撮影罪やグルーミング行為に関する議論が十分深められなかったことが懸念されるので、参議院でもしっかり議論してほしいと願います。

入管法「改正」が強行採決されることを望みません。被害者を人質にしないでほしい。

 一方、参議院では、入管法「改正」が審議されています。この法案は、2年前の通常国会で上程され、世論の強い反対の結果、廃案になりました。今回再提出された法案も命や人道に関わる重大問題が指摘され、当事者や支援者、市民から広範な反対運動が起きています。
 国会の会期は6月21日まで。刑法性犯罪規定の改正を成立させるため、という大義名分を持ち出して、近く入管法を強行採決をするのではないかと言われています。こうした動きに対し、私を始め、刑法改正に取り組んできた人たちがどれほど心苦しい思いをしているでしょうか?

 入管法「改正」法案の最大の問題点は、難民申請者の送還に道を開くことです。これまで難民認定申請中の方の強制送還は認められていませんでしたが、今回の改正案は、難民認定申請が3回認められない場合、母国への強制送還を可能とする規定を導入するとされています。命の危険を逃れて日本に助けを求めて来た人を、命の危険のある国に返してしまおうというのです。これは日本が批准している難民条約や拷問禁止条約によって認められる「ノンルフールマン原則」(拷問や迫害の危険のある国に人を送還してはならないという重要な国際人権基準)に反する深刻な人権侵害であり、今年4月には国連特別報告者が連名で再考を求める書簡を日本政府に送っています。
 日本の難民認定率は諸外国に比べて著しく低く、近年でも0.7%とされ、ミャンマーやアフガニスタンなど、人権状況が深刻な国から避難した人でも容易に難民と認めません。何度も申請したのに難民と認められなかった方々は今、恐怖で夜も眠れない生活を過ごしていると言います。保護と救いを求める人を無慈悲に送還して命を危険にさらすような制度は人道上到底許されません。
 入管法審議では、参議院に入ってから、梅村議員によるウィシュマ・サンダマリさんを侮辱するような問題発言が繰り返され、外国人への差別意識が法の根底にあることが羽化に上がっています。難民認定のずさんさが指摘され、果たして立法事実があるのかが問われています。これまで認定に関わってきた人たちが大量に短時間に、難民と認めない判断を流れ作業のように行ってきたことが明らかになっています。

 今求められるのは、難民認定制度を抜本的に改善し、厳しすぎる認定基準を国際基準に合わせ、独立の難民認定機関で審査する制度改革です。
 そして、一度滞在資格を失った外国人を裁判所の判断もないまま無期限収容できるとする現在の外国人収容制度を抜本的に改め、保護を優先することのはずです。人の命にかかわるような法律を拙速に通すようなことが絶対あってはならないと思います。

 そして、長きにわたり、刑法性犯罪規定の改正を求めて活動してきた、性暴力被害者の皆さんを人質にして、被害者に重い十字架を背負わせて、入管法改正を通してしまうという発想は極めて残酷に感じます。

https://twitter.com/change_criminal/status/1663392824522592257

人権はトレードオフできない。

 政府や関係者の方々は、性暴力の被害者が、入管法を強行採決した後で、刑法改正だけが確実に成立すれば、それで被害者が満足だと思われているのでしょうか?多くの人は声に出せないけれど苦しんでいると思います。
 人権を踏みにじられた者であれば、他者が人権を踏みにじられることに到底無関心ではいられません。誰かの人権や命を犠牲にして自分たちの利益だけが守られることを喜ぶ人は少ないと思います。
 そして、人権というのはトレードオフができるものではありません。
 誰かの人権を助けて、他の人たちの人権を踏みにじるということで帳尻が会うということはありません。性犯罪は魂の殺人と言われ、取り返しのつかない人権侵害です。しかし、庇護申請者が送還されて帰国後に殺害されることも決してあってはならない、取り返しのつかないことです。
 内閣支持率ではプラマイで考えるのかもしれませんが、そこで踏みにじられ、奪われる具体的人間の視点を欠落させたままの議論はすべきではありません。

刑法改正を先に審議することが問題の解決になる。


 衆議院で全会一致で可決された刑法改正については、成立の見通しが高い以上、先に審議し、入管法改正をいったん棚上げにすることが解決策になります。
  過去にはそのような前例が国会ではいくつもあります。

 刑法改正を大義名分にして、問題ある法律を強行採決するのはやめてください。そして、刑法改正については確実に今国会で成立させ、一日もはやく被害救済を前に進めてほしいと願います。
 多くの関係者が同じ思いでいることを、どうか政府・与党には知って行動いただきたいと思います。
 私は議員や大臣の良心を信じたいと思います。声が届きますように。

法務大臣に刑法性犯罪規定の改正を求める署名を提出。署名は14万まで増えています。


 

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