「ユウマさん! 笑顔…!」

沿道からの、ひときわ大きな、若い男性の声。
それに、小さくうなずいて返す1人。
赤い襷を掛けたランナーは、しっかりと顎を上げた。
ただ1人、強い向かい風の中、トップを守る。

なんとなく見ていた、ニューイヤー駅伝。ラスト七区の服部勇馬は、見てあげたいと思ったからテレビを付けていた。
残り三キロぐらいで、この一声が聞こえた。
……そうだ、笑え、服部勇馬。

ずっと、眉間に深い皺が縦に一本。苦しそうに白い歯が見える。
そんなに苦しまなくていいのに、背負わなくていいのに。

恵まれた体形、能力、環境、多くの期待の中、幾多の挫折。
それでも続く、選手としての日常。

生きることは、走ること。

そんなポジションの人も居るから。

だけど笑ってくれ。
あなたの一歩に励まされる人も沢山居るよ。
やりきった笑顔、楽しむ心地に共感できる人も居るから。
封印しなくていいのに。

そう。どんな人でも、自分を押し込む必要なんてないんだ。

自分も。
ちょっとだけ。笑ってみよう。
ちょっとだけ、顎を上げて。

自分の為に。

……優勝インタビューは、寒そうだなぁ……苦笑。

ここまで、お読み頂き有難うございました。感謝致します。心の支えになります。亀以下の歩みですが、進みます。皆様に幸いが有りますように。