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メロンパン・えれじー

「…………。それ、何?」
「やるよ」
「……なんでよ?」
「なんでって、いま、これしか無いから」
「だ・か・ら。どーーして今、メロンパンなの、っていう意味……!」
「あ…………、腹減ってんのかなぁと、思ってさ」
「…………」
「そんな怖い顔してさ。食べな食べな。甘いの嫌い?
 入学した時から思ってたけどさ、お前、細過ぎだぜ?
 熱量足りな過ぎだって」
「何、熱量って。理系ぶっちゃって……」
「理系っすよぉ。工作大好きな、現役理系っす。ほら」
「……要らないよ。……お腹なんて空いてない……。
 第一、そんな袋入りのメロンパンなんて食べなくたって、あっちにもこっちにも、おいしそうなカフェやレストランが、沢山あるもん」
「行かないよ」
「え?」
「レストランもカフェも連れてかない」
「……! 自分で行くわよ。一人でっ」
「ここで、街眺めながら、誰の目も気にしないで、甘いパンを頬張る方が、ずっと面白いし気楽だろ?」
 ほらっ。手を引いて、掌に。はあぁ?
「重っっ! 何よっ、これっ」
 怖……っ。なんで重いの? 見た目、袋入りパンなのに。袋はがさがさとした軽いビニールなのに。中身は石? 金属? みたいに、ずっしりとして。
 で、あいつ、吹き出していた。
 もうっ、人の気も知らないで。スニーカーの足に落としてやるっっ。
「はいはい。壊さないでねぇ。俺の傑作なんだから」
 さっさと取り上げる。
「やーーっと、立ち上がったな。じゃ、行くぞ」
「……行かない」
「行くって自分で言ったじゃん、カフェでもレストランでも。
 がっつり食べて、全部、忘れろ」
「……!」
「……髪切るよりマシだろ? ……折角、綺麗な髪なのにさ」

※このお話は、ひとつの画像にひとつのお話、という企画で作成しました。
 画像を使わせて頂いてありがとうございました。

ここまで、お読み頂き有難うございました。感謝致します。心の支えになります。亀以下の歩みですが、進みます。皆様に幸いが有りますように。