エリィ オン マーズ
火星は捨てられた。
300年火星開発計画は100年と経たず中止。
『投資に見合わない』というのが賢明な地球政府の経営判断だ。
5億の火星民は捨てられ、帰る場所は無い。
では彼らは地球を呪い、悲哀の内に火星に身を埋めたのか?
そんなことはない
捨てられようが見放されようが、火星の民は勝手に逞しく生きていた。
◯
稼働停止した有機プラント近く、牡鹿のような機械動物が電気トラップに倒れる。
これは火星の環境整備用自律ロボット郡『ライボッツ』
「やった! 大成功!」
ほくほく顔で獲物に駆け寄るのは、エリィ。
この火星でライボッツハンターを営む少女。
「オイルはボクのだからね。忘れないでよ?」
後に続くはエリィの頼れる相棒、フラット。
背中の武装を揺らす大型犬のごときロボットドッグ。
「解ってるって。ワルキューレと半分こ」
言いながら、エリィは慣れた手付きでライボッツを解体しはじめる。
フラットが欲しがるオイルはもちろん。その体は火星では資源の宝庫だ。
バッテリー、電送ケーブル、各種汎用半導体、角はレクテナアンテナ。その他にも山程。
しかし
ライボッツの記憶装置
青く透き通る球体結晶
通称 『テラ』
この掌大の小地球だけは残しておかねばならない。
エリィは一頻りテラを透かして楽しみ、残骸の中へ戻す。それが掟だ。
手を進めると、フラットの頭部コミュモニターが光る。
「エリィ、音響反応!」
「えぇっ!?」
驚く間も無く、背後の壁を破壊してエレカが飛び出す!
運転席には少年とも少女ともつかぬ人影。
続いて大型ライボッツが飛び出す!
サソリに似た多脚スイーパータイプがエレカを追う。
「大変! ワルキューレ!」
「ちょっとエリィ!?」
エリィが走りフラットが慌てて続く。
そして後方からは大型モーターサイクル『ワルキューレ』
シルバーの車体に2分割されたハートのエンブレム。
車体後部にフラットが収まり、エリィがスロットルを握る。
「1日1善!」
【続く】
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