行きます! 通心空手のフータ 『友情の懸賞チケット』

「返してよ! ヘキモンの懸賞チケット。
 それコウくんのだよ!」

 頭ひとつ小さいフータの後ろから、親友のリクが声を上げる。
小学校裏にある林の入り口公園は、ガラの悪い子供がたむろする場だ。
そこへフータとリクは乗り込んだのだ。

「わりーな! ローニンのアキラさんにこれと交換してもらったのさ!」

 太っちょ同級生が滑り台の上から飛び降りる。
手には、2枚の千円札。

「じゃあ理由を言って返してもらうから、その人どこにいるの?」

 後ろで縮こまるリクを見かね、フータが『お札を渡せ』と右手を広げてみせる。

「ヤだね。力ずくでやってみろよ?」

 太っちょが顔を歪ませて凄んだ。
しかしフータの影から半分だけ顔を出したリクが吠える。

「い、いっとくけど! フーちゃんすっごい強いんだからね!
 1級だよ! 通心空手1級なんだから!」

 一瞬の間。
その後、太っちょと取り巻きは嘲笑をあげた。

「リッくん。恥ずかしいからあんまり言わないで……」

「ごめん……」

 頬を赤らめるフータ。だが口元は強く引き締められている。
そこへ太っちょが飛びかかった!

「通信空手みせてみろやぁー!!」

 振りあげた拳が迫る!
しかしフータは手刀受けで迫る拳を肘ごと止めると、
そのまま掌底で太っちょのみぞおちを静かに押した。

通心流空手4級技
水月撫(すいげつなで)

― 通心流は心を通す空手。心無き者、敵う事無し ―

「こひゅっ……」

 その瞬間。太っちょは脱力、膝から崩れ落ちる。
こぼれそうになった紙幣をしかと掴み取り、太っちょを横たえる。
そして取り巻きへ問うた。

「で、アキラって人。どこ?」

「や、山のお城ホテル……」

「そう」

それだけ言うと、振り向いて歩き始める。リクが続く。


―3分後―

『スイマセン! チケット取り返しに来た2人がそっちへいきました!』

 ひび割れたスマホ画面に表示されたメッセージを見て、アキラは表情を変えずスマホを投げ捨てた。
そして言い放つ。

「さらってこい」


【続く】

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