ちほりひろか

40、41

ちほりひろか

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最近の記事

出口

もう少し歩いたらあるだろうと思っていた階段が無い いくら歩いても地上へ出れる気配は現れなくて 大分歩いていることに気がついたとき このままずっと地下を彷徨うのではないかと不安になった 前回は確かにあったところに 階段がない ずっと続いている工事は 終わる気配はないけれど 確実に姿は変容している 出口は無くなってしまったわけではなくて 場所が変わっただけで それに気がつきさえすれば また私たちは胸を張って歩いていける

    • かたち

      何にも付属したものがない 単純なわかりやすい形だった ただ好きという気持ちだけの はずだったものは いつのまにか 嫌われたくないとか 好かれたいとか この文章なら返事がくるかなとか 気がついたら 色々な媚びへつらいがくっついた 複雑な形になっている

      • ディスタンス

        右隣に座る女の洋服の 左側の腕に付いている 左右だけが留まっていて 上下は留まっていない ワッペンらしきものが 女がケータイを操作したり 女が腕を少し動かしたり 女が髪を触ったりするだけで 私の右腕の素肌に当たる 痛くはないけれど 触れるたびにくる摩擦が不快で それに気がつかない女も不快だ

        • 一番後者がいい

          なぜあんな遅い時間だったのか 睡眠時間が短いのか やることが終わった後だったのか 誰かと会っていたのか 気がつかなかったのか めんどくさかったのか 返す返事の文章を考えていたのか

          いみ

          絵文字に自分の好意を 絵文字に自分の期待を 勝手に背負わせていた絵文字を 使わなくなった理由を 使っていないという事にさえも きっとあなたは気がつかない

          いつも

          過ぎ去って 通り過ぎて 大分経ったあと 振り返ってみて やっと気がつくことばかり

          えずく

          必死に外に出ようとしているそれを 吐き出すことが出来なくて その度にえずく 喉にひっかかり えずくだけで吐き出せないそれは またゆっくりと戻っていく

          沈みゆく

          今年こそ そう思っていた 今年こそがあと半分 良い方向には 何も変わらず 別の方向へと 不安ばかりが突き進む ぬかるみに浸かる両足は もがきながら 沈んでいく

          濃淡

          私が毎日の中で思い出すたび きっと 思い出しもしていない彼にとっての 私という存在が とても薄くなっていく 薄くなってしまわないように 足掻けば 足掻くほど 自分にとっての 私という存在が 薄くなっていく

          目覚める

          眠りから戻った瞬間から 思考が始まる 上手く乗りこなせない私は 次々と湧き上がる思考に 飲み込まれて 息が上手く出来ない すでにある記憶と まだ訪れていない想像 それらに挟まれながら なんとか浮かびあがろうと 私は両手も両足も動かし続けている

          副作用

          一年以上先延ばしにしていた もう抜くしかない 虫歯になっている親知らずを 先日とうとう抜いた 一年以上も先延ばしにしていたのは ずっと痛むわけではなくて 毎日に支障が無かったから 一年以上も先延ばしにして 抜こうと決めたのは たまにしくしくと一日中痛むから たまに痛むぐらいならいいかと思っていたのに たまに痛むのが嫌だに変わった 通っていた歯科医院ではなく 以前住んでいた場所の 以前通っていた歯科医院で抜こうと決めた 通っていた歯科医院は なんだか自分とは合わない気

          独り相撲

          今までとは変わりたくて このままでは何も変わらないと 背を向けて歩きだしたはずなのに 例え目が合わなくても 存在を感じるだけでの安心感があるのだと やっと少しは遠くまで歩いていけていたはずなのに 私は振り返って また場内へと歩き出している

          侵食

          空洞に不安が入り込んでくる 空洞が大きければ大きいほどに 空洞を小さくするために 私は食べる 空洞を埋めるように 私は飲み込む

          切り裂いて

          忘れゆくことの不安と闘うかのように 突っ切るように母は歩く そんな心配を散り飛ばしたくて 突っ切るように私も歩く

          道標

          知り合いでもないし 友だちでもない けれど 沢山好きで でも 付き合いたいとかの 好きではなくて だけど 私の道標となっている 彼みたいになりたい とかではなくて 私の 私が行く道を こっちだよと 示してくれる 彼が生み出していく作品が 彼に会わずにしても受け取れて その度に 霧がかかったかのように 見通しが悪かった道が 急にはっきりと見えるような そんな私の存在は知らない 彼の存在

          別れてみたら

          もうじんじんと痛むこともない のかと思うと あんなに悩まされていたくせに なんだかさみしい いつからワタシの中にいたのか 何年も一緒にいたのだなと思うと やっぱりさみしい あんなに悩んで悩んで 悩む時間が長いほどに 不安が大きくなっていたのに そんな悩みは空振り三振で 何か詰まってないか 欠けて空いてしまった穴を 舌で確認することももうない 痛みがワタシを苦しめていたのに 痛みがなくなったいま ワタシが本当に生きているのか 存在しているのか 確かめようがない

          別れてみたら