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今日の一冊vol.5《うちの執事に願ったならば⑧》

久しぶりの読了記事。

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佐原ミズさんの美麗なイラストはいつ見てもため息がこぼれる。

テーブルクロスや卓上の花、椅子の背もたれのチョコレート色が、全体的に柔らかいのにはっと目を吸い寄せられるような色合いが好きだ。

舞台となる家の内部構造や景色を、脳内で想像しながら読み進めるのもとても楽しくて、特に豪華且つ色彩豊かな烏丸家の様子や、贅を尽くした料理の詳細な描写が魅力的だ。

それにしても、ふたりの関係の変化に何とも感慨深いものを覚える。

一読者であるこちらが思わず息をのむほど、ふたりの出逢いとそれぞれの第一印象は最悪で、互いが持つ執事と主人の理想像の齟齬から何かと衝突しあい、心にきつく爪を立てあうような言葉の応酬にひやひやした。

作中で衣更月が、花穎の特異な目のことに思いを馳せたり、表情や言葉に心を揺らす様子があって、以前の彼なら、そんな自分の様子に苛立ったり、執事失格だと自分を戒めていただろう。

でも、今ではそれを不快だと断じることなく、戸惑いつつもそれを受け止めている。

なんというか、そういう二人の関係性が、読者である私も心地が良いなぁと感じるのだ。

次で物語が締めくくられるそうで、寂しい限りだが、願わくば、外伝的なショートストーリーの詰め合わせも味わってみたい。





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