日本酒余話〈1〉古今亭志ん朝の受難

2001年10月、63歳の若さで亡くなった古今亭志ん朝。立川談志と並ぶ、戦後の東京落語の天才として、円熟が期待された。しかし、その至芸に接する前に鬼籍に入ってしまったのは残念としか言いようがない。
志ん朝師は、父親の志ん生ほどではないが酒好きで知られていた。師匠がある時、蕎麦屋に入り、そばを手繰る前に「冷や一杯」と頼んだら「冷酒」が出「「蕎麦屋でも日本酒の状態が分からなくなったか」と慨嘆したと。とはいえ、その時出てきた冷酒は美味しく頂いたらしい。ちなみに「冷や」とはその時の室温で飲むこと。さすがに夏場は暑すぎて、口当たりがよくないので、江戸時代は井戸水で冷やして飲んだらしい。地球温暖化で今では冷蔵庫で冷やして飲む人も多い。「冷や」と「冷酒が混同されるのは無理ないところもある。

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