日本酒取材ノート第5回 灘・西郷の中堅蔵沢の鶴の転身

灘五郷の西端「西郷」にするする沢の鶴。本社工場か車で5分も走れば、神戸最大の繁華街三ノ宮に着く。そうかと思えば同社横の都賀川には、時々ボラの大群が遡上してくるなど、都市化されつつ、自然のなかにある環境下で操業している。
同社は昔から謹厳実直ともいえる姿勢の企業だった。生酛づくりの日本酒、純米酒など伝統的な酒造りには定評があった。しかし、その反面、主力ブランドもそれほど知名度はなく、地味な印象は否めなかった。
その一方で熱烈なファンがいることも事実。つい先日も神田の寿司へ行って日本酒を頼んだら「うちは30年来沢の鶴一筋です。親父が元気なうちは沢の鶴だけです」と話していた。
また、1995年に発売された「上撰丹頂1,5カップ」もサラリーマンの支持が高かった。出張に出たサラリーマン氏は、お酒は飲みたし、外へ飲みに出るほどの余裕はなしという時、コンビニで「1,5カップ」とつまみを買い込み、ホテルの部屋で1日の疲れをいやす人も多かった。そんな時、カップ酒2本では翌日が心配で、1合半の「1,5カップ」が絶妙の量だった。もちろん上撰丹頂で1合半なのに価格は変わらないのも高評価の一因だった。

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