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楽しいところに人は集まる

・新卒の時に感じた言葉
・正直、新卒時代は苦しい仕事しかなくて楽しいと思えることがなかった
・テレアポ、飛び込みといった前時代的な営業と「やればできる」という根性論
・ブラック企業という環境も相まって精神は地獄だった

・しかしそんな自分がそう思ったのは、不動産営業として様々なお客様に出会えたからだろう
・法人向けの不動産営業だったので、お客様の多くが経営者だった
・その中でも案件規模が小さいものが新卒に回ってくるので、独立したばかりの社長が多かった

・物件を回る中でお客様のことを知るために、物件を巡る途中で会話をする
・独立したての経営者の多くは、自分の仕事を楽しそうに話してくれた
・私はお客様ながら「こんな人になりたいな」「自分もいつか経営者になりたいな」と思っていた

・しかし現実はブラック企業で残業月80時間の日々
・当たり前のように精神が削れ、毎月来ていた生理も止まってしまった

・雪が降り積もるある日、一人のお客様を案内した
・会社のテレアポ部隊経由で案件化したお客様だ
・電話内容を聞いて「広すぎる部屋に月20万家賃で支払っているので的確な広さにしたい」と思ったらしい
・テレアポから実行しようとするなんて、行動力ある人だなと思ったのをよく覚えている

・道中、雪がよく積もっていて足元が滑りやすかったので、そのお客様に「足元に気をつけてください」と言った側から自分が転んでしまった
・絵に描いたような展開に、想像以上に笑われてしまった
・もちろん心配もしてくれたが、それ以上に「たおるんさんは仕事楽しそうですね!この仕事好きでしょ?」と言われた
・咄嗟に「はい!楽しいですよ!」と答えた
・全力の嘘だ
・ブラック企業が好きなわけもないし楽しいはずがない

・しかし嘘であってもお客様が満足した答えならそれでいいのだ
・結果的に契約は取れたし、什器に困っていそうだったので業者も紹介した
・二重で喜ばれた
・「仕事が楽しい」は嘘だったが、楽しそうにするだけでも人は集まるのだと感じた

・しかし本気で「楽しい」と思って仕事している人には敵わない
・その後に出会う仕事関係の人から思い知らされた
・いくら相手に嫌な想いをさせないようにするためとはいえ、嘘めいた答えを出すことへの限界を感じた
・何度か転職をしたので今は違う業界で働いているし生理も再開したが、それでも今の仕事は自分に合わないと感じている
・本当に自分が「楽しい」と思える仕事が見つけられた人は恵まれている
・さすがに最近「楽しい」と嘘をつきすぎて、嘘がつけなくなってきた

・「仕事が楽しい」ということが嘘であったとしても、それは悪い嘘ではない
・聞いた相手が悪い気分になることはない
・でも自分にとっては悪い嘘だったんだろう
・最近ではいつもの「楽しそうなノリ」ができない
・心のどこかで放っておいた「楽しくない」「やりたくない」という気持ちの主張が激しい

・こんな状況のど真ん中なので解決策も行動指針も見えていない
・とりあえず自分の気持ちをしばらく優先させて過ごそうと思う

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