配慮強盗

吾輩はゲイである。
以前勤めていた会社で唐突にLGBT研修なるものが開かれた。
LGBT支援の会社の人がやってきて講習会を開くそうだ。
吾輩はカミングアウトしてないし、研修は強制参加だったので仕方無しにと会議室へ向かった。
複数人いる講師は皆若く、自己紹介で「私はヘテロで弟がゲイのアライの○○です」「僕はゲイの△△です」と横文字と性指向で威嚇してくる。
そして語られる内容は配慮して配慮して配慮してという地獄のように配慮を求めるだけの内容だった。
制服が男女で違うとLGBTは選べないから配慮して
トイレが男女別だとLGBTが使えないから配慮して
男性なら彼女、女性なら彼氏がいるのか?と性別を固定して尋ねるのは困るから配慮して

LGBTにフレンドリーな立場表明をしていないと良い会社じゃないってことなので配慮して
世の中のLGBTへの配慮だけで豪邸が建つのではないかと思うほどの要求っぷりである。
コストも労力も相手の負担も何もかもを度外視している。
しかしまだまだ終わらない。
子供の話をするときはお嬢さん、息子さんじゃなく、「お子さん」で統一
男らしい、女らしいの禁止
レズではなくレズビアン、ホモではなくゲイ、同性愛者じゃなくてLGBT
恋愛話をするときには彼氏、彼女じゃなくて恋人、パートナー
恐るべき言葉狩りも並行して始めている。
被害者という立場を自分で設定してこんな強欲な要求を引っさげてくるような人物を私は良い人間とは思わない。

要求は留まることを知らない。
LGBTの人がそのことをカミングアウトしたときの正しいリアクションをマナー講師さながらに解説し始めた。
①言われた内容を理解したことを告げる「そうなんだ」
②カミングアウトした勇気を称え、謝辞を述べる「勇気ある告白をありがとう」
③今後も以前と変わらない関係を約束する「○○は○○だよ」
④口外しないと約束する「他の人には私からは言わないよ」

関係性によって多少の口調は変わるだろうが概ねこんな内容。
内心はともかくとして、口に出すべき言葉まで指定してきた。
しかし、最も不愉快だったのが、
「カミングアウトした相手の心理的負担をまるでかんがえていない」
という点。
カミングアウトした方はスッキリするだろう。
抱えていた秘密を共有する相手ができたのだから。
しかしカミングアウトされた方はそんなことはない。
1人では抱えきれなかった荷物を倫理的強制力によって持つことを手伝わされるのだ。
この大仕事に対して得られる報酬は「1人の信頼」と「アライ(LGBTの理解者)という称号」。
実に割に合わない。
こんな人にカミングアウトのターゲットにされた方、ご愁傷様。

吾輩自身がカミングアウトしていないゲイではあるが、例え社内のゲイにカミングアウトされたとしてもお返事カミングアウトなんてするつもりもない。
会社では彼氏のことを彼女と呼び、結婚の話題はお互い別地方の田舎で古い価値観で面倒なんです、で通している。
自分で僅かに言葉を変換し、想定される質問の簡単な方便を用意するだけ。
この手間を惜しみ、自分の性的指向を公開して楽に生きられると考えることを吾輩は浅ましいと呼ぶべき行いだと思う。
己を知って欲しいという欲求もよく分かる。
しかしちゃんと考えるべきだ。
自分の告白によって相手が受ける負担のことも。
勇気ある美しい行為・カミングアウトなどと曖昧なイメージで礼賛するべきではなく、社会人として誠実な考えと対応をLGBT当事者は考えるべきだと吾輩は思う。

結論:LGBT支援を謳うならまずは正しいLGBTの姿の理解を促して欲しい。
   そして現実的な方策の提案をすべき。

個人的に考えるLGBTへの会社の対応について。
今考えながら書いてる程度の浅知恵である。
①社員要望窓口を設ける。
以上。
正直吾輩は今の生活に不便していないから何も望むことはないし、同性愛者であることがバレるのも御免こうむりたい。
LGBT支援団体は性別は千差万別だと主張しているのだから、LGBTの総体としての主張など本来は意味がないはずだ。
あくまでも個別に対応するしかないのだ。
だから男でも女でもLGBTでも利用できる社員要望窓口を設ける。
これが5分ほど考えた最も平等な吾輩の答えだ。

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