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たつや#9

たっくんと待ち合わせすると、ホントに毎回、ペアコーデみたいになるの。

私が白いセーターにデニムを履いてると、たっくんはジャケットに白いスキニーパンツ。

私が茶系のニットを着ていくと、たっくんは茶系の革ジャン。

私がピンクのワンピースを着ていくと、たっくんはピンクのワイシャツにネクタイ。

示し合わせてきたかのように。


ホテルの最上階で、夜景の観える席でお食事。
高級鉄板焼で、熱々ジューシーなお肉をうっとり眺めながら、私の話を静かに聴いてくれる、たっくん。

お互いのお仕事の話も、真剣に語り合う。

そして、たっくんの夢や今の目標についても、聴かせてもらったりして。

そこには、ゆったりと、静かに時間が流れている。


「あーあ、私、ずーっと働き続けてきてるけど、
ほんとはね、お家のことしてたいの。夢は専業主婦!」

「そうなの?、、、、その夢だけは、俺じゃ、叶えてあげられないな。」といって、水割りをグィッと飲む、たっくん。

「なに、なに、もぉ、なに、今更〜!わーーーかってるってば、そんなの!もぉやだなー」

だって、そう言うんじゃないじゃん、私達、、、そう、、、わかってる。

そう、そんな次元じゃない。

そんな次元には、そんなスケールには収まらないよね、私とあなたは。


お肉を堪能し、デザートへ。
「デザートをお持ちしますので、個室へご案内いたします」
すると、たっくんは、
「あー、デザートここでいいです。持ってきてもらえますか?今、もう少しこのままここで、話してたいんで。ありがとね」
と店員さんにウインクする←⁉︎笑

仲間とワイワイ破天荒な、ヤンチャなたっくん。
お立場上もあるだろうけど、いつも破天荒キャラでみんなを引っ張っていく、たっくん。

素顔は、とても物静かで、じっくり物事を考えながら、思慮深く、ゆっくり語るたっくん。

そんなたっくんの話を聴くのが好きだった。
少し照れながら、時々の沈黙も心地いい。
勿論、私の話も静かにずっと聴いてくれる。

なんだろ、双子?兄妹?幼馴染?なんだか、そういう安定感というか、不思議な安心感が持てるパートナーみたいな?感じなのかもなー。


帰りのロビーで車を待つ間も、名残惜しいのを紛らわすかのように、ふざけて冗談ぽくおどけた話で、どことなくなんか辿々しい。笑

もうバイバイの時間かー。楽しい時間はあっという間だね。
「もうちょっと一緒にいたいなぁ」
なんて、言っちゃったりなんかしてね。

すると、たっくんが
「やっぱり、もうちょっと一緒にいようか!」

うん!(え?今、私の声聴こえたのかしら)
嬉しい!

そしてたっくんは咄嗟に
「いい事思いついた!こっちきて!」
と、私の手をひいて走り出した。

ど、どこいくの?

「いいから、こっち!こっちだよ!」

え?非常階段?

隣のオフィスビルとも繋がっている、階段を駆け昇る。
たっくんと手を繋いで、夜の螺旋階段を駆けあがる。

「このビルはね、俺の幼馴染のビルなんだよ!あ、こっち!こっち、ついてきて!」

え!オフィスビルの廊下?真っ白な廊下。誰もいない。

その廊下の奥に、トイレがあった。
たっくんは、「いい?俺が先に入ってるから、後から入ってきて!」といって、入ってったのは、、、、⁉︎

女子トイレ⁉︎

渡部か‼︎(笑)

えー、どーしよ、どーするの?やばくない?
モタモタしてると、足音が!
警備さんかな!ヤバっ!
と、思わず、女子トイレへ逃げ込む私。

たっくん、こんなとこいたら、、、
「シッ‼︎声出さないで!」

「このまま、じっとして」
わ、わかったわよ。なにこのスリル(笑)

たっくんは優しく強くぎゅっと抱きしめたまま、
じっと静かに、私を覆い包み込む。

私の奥が生暖かく潤いながら脳天を突き抜ける。
たっくんの鼓動が肌づたいに聴こえる。
隆々とそそり立ち、脈を打つ躍動を肌で感じる。

たっくん、、、、、ね、やっぱりやめとこう。
「あ、うん、わかった、、、うん」
そういって、優しく抱きしめてくれた。
残された時間を惜しむように、丁寧に、ぎゅーっと深く包み込む。
「癒される、、、このまま離したくない」

たっくんは、抱きしめる時はいつも、優しかった。

言葉はなくとも、心が伝わってくる。
暖かさ、ぬくもり、愛、
そして、せつなさ、哀しみ、葛藤、苦悩も。


「あ!誰か来るぞ!」

警備員さんらしき足音が近づいてくる。

「こっち!廊下でたら、振り返らず、そのまま真っ直ぐ進むよ!」
といって、たっくんは私の手をひいて、
「こっちの階段降りよう‼︎」

なんなん(笑)まいっかー!楽しい♪

いい大人が、オフィスビルの階段を駆け降りる!
なんか、こんなの大人になって初めて!

たっくんと、オトナのかくれんぼ。
やっぱり破天荒よね〜。

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