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水木しげるの妖怪「百鬼夜行展」

 今年は漫画家・水木しげるの生誕100周年に当たり、そごう横浜店の美術館ではその原画などを集めた展覧会が行われている。

 私が訪れたのは平日の夕方だったが、それでもなかなかの盛況で、妖怪たちが描かれた原画を熱心に眺める若い人たちの姿も多く見られた。

 水木しげるの代表作である『ゲゲゲの鬼太郎』が定期的にテレビアニメ化されていることに加えて、近年はそれ以外にも妖怪が登場する漫画やアニメが人気を博しているから、その影響もあるのだろう。

 水木しげるは、江戸から明治・大正期につくられた絵巻物や民間伝承などに登場する妖怪たちをモチーフにして、『ゲゲゲの鬼太郎』にも登場する多くのキャラクターを創造していったという。

 かつての日本には、灯りの少ない夜はもちろんのこと、森の中、納屋の奥、井戸の底などに物理的な闇があった。それに加えて、飢饉、貧困、差別などの社会的な闇も存在していた。

 そうした闇への恐れや負い目、怒りなどが人々の心の中に妖怪たちを生み出していったのだろう。

 テクノロジーの進展によって、人々の周りから物理的な闇は失われていった。

 それでも、水木しげるが描いた妖怪たちがリアルに感じられるのは、争い、不正、裏切り、格差、差別といった人間同士の闇の部分が今も世の中にあり続け、拡大しているからなのかもしれない。

 そごう横浜店での展示は、3月10日(日)まで。

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