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それは「偽物」なのか?

 徳島、高知両県の県立美術館は、所蔵している油彩画に贋作の疑いがあると発表した。

 贋作の疑いがかけられているのは、徳島県立近代美術館がフランス人画家ジャン・メッツァンジェの作品として所蔵している「自転車乗り」と、高知県立美術館(高知市)がドイツ人画家ハインリヒ・カンペンドンクの作として所蔵する「少女と白鳥」である。

 どちらもドイツの「天才贋作師」と呼ばれるウォルフガング・ベルトラッキ氏が手がけた疑いがあるとされており、6月上旬に美術関係者から情報提供があったことで疑惑が浮上したそうだ。

 ベルトラッキ氏は、妻のヘレン氏と共謀して30年以上にわたって300点以上の贋作を作り、数百万ドルを手にしたとされている。贋作の大半は、自身のオリジナル作品に他界した著名画家の未公開作などの題名を付けるという手法によるものだ。

 両美術館とも当該の作品を購入してから20年以上が経過しており、どちらもこれまでに多くの人々の目に触れていたということになる。

 もしも贋作だということが証明されれば、専門家も含めた多数の人間がまんまと騙されていたというわけだ。

 しかし、これは氷山の一角なのかもしれない。そもそも、美術の教科書に載っているような「名画」の中にだって、贋作や模写が紛れこんでいる可能性があることは否定できないのだから。

 その一方で、本家の画家が好みそうな構図、そして本家と同じ色づかいやタッチで仕上げられた贋作であれば、それを鑑賞した人間の感動や発見は「偽物」ではなく「本物」と呼んでもいいのではないだろうか。そんな気もする。

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