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【読書ノート】『ちょんせいこのホワイトボード・ミーティング』(小学館)

 以前にも書いたことだが、最近の大学や大学院の授業はパソコンなしでは成り立たないと言っていいだろう。

 授業中の説明等はパワポのスライドを使って行うことが一般的だし、資料もクラウド上で共有すれば印刷する必要もない。

 学生もパソコンを筆記用具の代わりしているし、作成したレポートなどもデータで提出することが可能だ。

 しかし、グループで話し合う際などに重宝されているのは、アナログのホワイトボードである。

 Google Jamboardをはじめとして、パソコンにもグループでの活動に利用できるアプリはある。けれども、手軽さや表現力などの面で、やはりアナログのホワイトボードのほうが一枚上なのではないだろうか。

 教員にとっても、各グループで話題になっていることがホワイトボードで可視化されれば支援や助言をしやすい。また、進捗状況なども一目瞭然である。

 そして何よりも、ホワイトボードを囲んでワイワイ議論をすることが、思考の活性化につながるのではないかと思う。


 この本の著者・ちょんせいこ氏は、「ホワイトボード・ミーティング」の開発者であり、これはその入門書だとも言える。

 全64ページのムック本だが、内容の密度は濃い。この本では、主に小学校低学年の子どもたちが「1人1枚のミニホワイトボード」と「グループに1枚の大型ホワイトボード」を活用しながら、「ファシリテーター」になるまでの方法が4つのステップで紹介されているのだ。

 ホワイトボードを活用することで、子どもたちは「話す」「聞く」「書く」「読む」から成るコミュニケーション能力を身につけていく。そして、そうした個の高まりが、相互に承認し合う学級づくりにつながるのだ。

 また、こうした子ども向けの使い方だけでなく、この本の後半には教員向けに、学級の課題解決に向けた「ホワイトボードケース会議」の進め方についても紹介されている。


 無論、ホワイトボードを使わせておけば子どもの力が高まる、という単純なものではない。コミュニケーション能力の育成にしても、相互に承認し合う学級づくりにしても、そこにはコツがあるのだ。

 たとえば、30ページには「しつもんのわざカード」として、問いや相槌などの具体的な例が載っている。これらは、インタビューや対話の際に大切なポイントとして、小学生はもちろんのこと、大学生や社会人にも役立つだろう。

 教師向けの本ではあるが、複数の人間でミーティングを行う「チーム」の関係者には、きっと役に立つ1冊だと思う。

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