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自由進度学習(上)

 先日、市内の公立小学校で取り組まれている「自由進度学習」の授業を参観する機会があった。

 この自由進度学習は、中央教育審議会の特別部会のなかでも、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を図る学習スタイルの一つとして紹介され、注目されているものだ。

 今のところ、この自由進度学習に明確な定義があるわけではないが、

「授業の進度を学習者自ら自由に決められる自己調整学習の一つの手法」  

蓑手章吾「自由進度学習のはじめかた」(学陽書房)

 というとらえ方が一般的だろう。

 ただし、「自由」とはいっても学習のすべてを子どもに委ねるというわけではない。教師が計画した学習内容の枠組みのなかで、子どもたち一人一人が課題を自己決定・自己選択し、学習の計画を立て、自分に合った速度で学ぶというものだ。

 また、これまでの自由進度学習の実践事例では、学習の過程で仲間と関わることが重視されているように見受けられる。これは、「個別の学び」が「孤立した学び」にならないようにとの配慮ではないかと推察する。

 従来型の授業の多くは、同じ時間内に、同じ内容を、同じ方法で学ぶというスタイルで実施されてきた。このスタイルは、大人数が効率よく学習するという点では優れているが、子どもたち一人一人の学習状況や興味・関心に応じることは難しい。

 結果として「落ちこぼし」「吹きこぼし」「受け身の学習態度」を生んできたとも批判されている。

 ・・・この自由進度学習は、一見すると新しい学習スタイルのようにも思われる。だが、けっしてそんなことはないだろう。

 たとえば、体育の跳び箱運動における「台上前転」の授業を考えてみよう。子どもたちが「様々な段数の跳び箱や、マットを積み重ねた場など」から自分に合った練習場所を選択し、「学習カードや示範の動画などの学習資料」を活用しつつ、必要に応じて「仲間と教え合ったり、助け合ったり」しながら学習を進めるというスタイルは、従来からある体育科の指導書などでも紹介されているものだ。

 先の「授業の進度を学習者自ら自由に決められる自己調整学習の一つの手法」という言葉に照らし合わせれば、これも自由進度学習の一つだといえるのではないだろうか。


 私が参観したのは5年生の算数の授業である。単元は「四角形と三角形の面積 ~面積の求め方を考えよう~」で、前時までの学習をもとにしながら、三角形の求積の仕方を工夫するという内容だった。

(つづく)

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