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「三人寄れば文殊の知恵」って本当?

「三人寄れば文殊の知恵」
 という諺がある。

 文殊とは知恵をつかさどる菩薩のことで、
「凡人でも三人集まって相談をすれば、すばらしい知恵が出るものだ」
 という意味だ。

 たしかに、三人の人が集まって相談をすることで、一人では思いつかないような斬新なアイデアが出たり、納得解が見つかったりすることはあるだろう。

 けれども、そんなに上手くいくわけではない。

 そもそも、二人だけで話し合うときでさえ、片方だけがよく喋り、もう片方は聞き役に回るということが多い。

 それが三人に増えると話し合いが活性化するかと思いきや、三人目が傍観者になってしまうケースもある。

 だいたい、「何を言っても否定されない」という心理的安全性がなければ、人数が増えたところで建設的な話し合いにはならないだろう。

 かといって、自由に話し合ったとしても、三人の断片的なアイデアをつなぎ合わせただけの折衷案や妥協案に落ち着くことが少なくない。

 また、三人のそれぞれに一定の知識や経験がなければ「烏合の衆」に過ぎないし、自己主張の強いタイプばかりが集まると「船頭多くして 船 山に上る」ということになりかねない。


 ・・・では、優秀で誠実な人が三人集まれば「文殊の知恵」が生まれるのかというと、必ずしもそうではない。

 優秀で誠実な人ほど前例に固執したり、有力者に忖度をしたりして、話し合いが迷走することがよくある。

 そして、さらに人数が増えると、何の解決にもならない珍妙な結論が出てしまったりするものなのだ。

 ・・・「なんと情けない」と思う。だが、いちばん悪いのはそういう優秀で誠実な人たちに忖度をさせている存在なのだろう。

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