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続・「急いで口で吸え!」

 3か月ほど前に、「急いで口で吸え!」という記事を書いた。

 この記事のタイトルは、小林克也や伊武雅刀らのユニットである「スネークマンショー」が1981年に発表したラジオドラマに由来している。そのラジオドラマは、こんな内容だった。

 舞台は、戦場となっているジャングルの中。
 基地内では上官が兵士たちを集めて、戦場で生き延びるためのコツを伝授している。
 上官が伝えたコツの一つ目は、
「もしも戦場で毒ヘビに噛まれたら、傷口をナイフで切り開き、急いで口で吸え!」
 というものだった。
 上官は兵士たちに、
「急いで口で吸え!」
 の部分を順に復唱させる。
 続く二つ目のコツは、
「もしも戦場で毒グモに刺されたら、傷口をナイフで切り開き、急いで口で吸え!」
 だった。
 その復唱が終わると三つ目は、
「もしも戦場でサソリに刺されたら・・・」

 上官の話が終わると、兵士たちは敵陣へ突撃する。
 そして、しばらく銃声が続いた後、静寂が訪れる。

 本当に必要な情報は何一つ与えられないまま、突撃させられる兵士たちの悲哀を描いたブラック・コメディである。だが、第二次世界大戦末期の某国軍隊では、これと大差のないことが実際にあったようだから、けっして笑いごとではないのだ。


 ・・・3か月前にこの記事を書いたきっかけは、「教員不足が深刻になっている某自治体の教育長が、市民に教員確保への協力を呼びかけるために街頭でティッシュ配りをした」というニュースを聞いたことだった。

 このニュースを基にして、教員不足をテーマにしたラジオドラマをつくるとしたら、タイトルは「急いでティッシュを配れ!」になるだろう、と思った。


 だが、もはやブラック・コメディではすまされない。
 先月末に文部科学省は、教職大学院の学生が履修する実習について、
・現職教員の学生の場合には、非常勤講師として勤務校で実習を行うことを推奨する
・勤務校を持たない学部新卒の学生については、非常勤講師として授業の一部を受け持ちながら実践的な実習ができるようにする
 という旨を関係機関に通知したのだ。

 ・・・たとえるならば「学徒動員」、いや「学徒出陣」だろうか。
 そしてこの施策が、どれだけ教員不足の解消に効果があると考えているのだろうか。

 現実はブラック・コメディよりもブラックに近づいてきているのである。

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