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民主主義とコスパ

 都内のあちこちで、東京都知事選挙のポスター掲示板を見かけるようになった。

 掲示板には1〜30までの番号が振られている。過去最多の立候補者があったのは、前回選挙のときの22人だというから、30人分のスペースを用意したのは妥当な判断だったといえるだろう。

 しかし、今回の選挙には50人を超える立候補者が予想されるという。一応、掲示板には予備のスペースも含めて48人分のポスターが貼れるようになっている。だが、立候補者が50人を超えるとなれば、それでも足りなくなってしまうのだ。

 仮に49人以上の立候補者がいた場合には、都内14230箇所に設置している掲示板に継ぎ足しをする必要が出てくる。そのための工費や作業量は相当なものになるだろう。

 この他に関係者が頭を抱えているのが、政見放送のことらしい。

 政見放送における候補者1人あたりの持ち時間は5分30秒以内と決められており、それを2回にわたってNHKが放送するそうだ。

 前回・2020年の都知事選では20人が政見放送を行い、その2回分で4時間18分かかった。これが50人となると、のべ放送時間は単純計算でも10時間以上になる。

 これではNHKの番組編成にも影響が出るだろうし、放送の枠を買い取る東京都にも5千万円を超える持ち出しが予想されるのだ。


 民主主義は、時に面倒くさい。コスパやタイパを求める世の中の流れに逆行をしているようにも思える。しかし、効率を優先してしまえば、それはもう民主主義とは呼べなくなってしまうのだ。

 いくら時間や労力がかかろうとも、それに付き合っていくこと。それが民主主義なのだろう。

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