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ツッコミどころの多い話

 他の自治体で小学校の教師をしている年下の知人から、こんな愚痴を聞かされた。
「来月、うちの学校を指導主事が訪問して、全クラスの授業を参観することになっているんですが、先日の職員打ち合わせの際に、校長から『そのときの授業では、全員かならずタブレット端末を使うように』という指示があったんです」
 というのだ。

 彼の勤務校には、支援学級を含めて14のクラスがある。指導主事による授業参観は2時間目の45分間に行われ、最初は支援学級、その後は1年生の教室から順番に回るのだという。
 そのため、校長からは、
「指導主事が回ってくる時間を予想して、その時間帯にはなるべくタブレット端末を使っているようにしてほしい」
 という言葉も添えられていたそうだ。

 彼の情報によると、近隣の学校で指導主事訪問が行われた際にも、事前にその学校の校長から職員に対して、「授業ではタブレット端末を使うように」という指示があったのだという。


 彼の自治体では、GIGAスクール構想で配当された「1人1台端末」の活用が十分に進んでおらず、先日の議会でも問題になったのだそうだ。

 ・・・ここからは推測だが、おそらく教育委員会から各学校の校長に対して、
「次の指導主事訪問の際には、各校における『1人1台端末』の活用状況について確認します」
 という話でもあったのだと思う。
 そこから先の対応は学校によって異なるのだろうが、彼の勤務校では校長から教育委員会への忖度が過度にはたらいたのかもしれない。

「・・・もっとも、こうでもしないとICTを全く活用しようとしない人もいるので、これはこれで意味がないわけじゃないんですけどね」
 そう言って、彼は苦笑いをした。
 どうやら、彼自身は日常的にICTを使っているのだが、未だにベテラン教師を中心とした抵抗勢力がいるらしい。


 目的と手段の逆転。
 その場しのぎ。
 上意下達。
 ・・・いろいろとツッコミどころの多い話である。

 その中でも一番由々しきことは、
「学ぶ側の子どもたちのことが、一切考慮されていない」
 ということなのだが。

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