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「ハヤブサ消防団」〜地域社会と余所者(よそもの)〜

 7月期に放送されたテレビドラマの中で話題になった作品の一つに、池井戸潤の原作による「ハヤブサ消防団」がある。

 その「あらすじ」はこうだ。

 ミステリ作家の三馬太郎は、東京での暮らしに見切りをつけ、亡き父の故郷であるハヤブサ地区に移住をする。
 地元の人の誘いで居酒屋を訪れた太郎は、そこで消防団に勧誘され、 迷った末に入団することを決意する。しかし、当のハヤブサ地区では相次いで放火による火災が発生することになる。
 やがて、それがハヤブサ地区を聖地にしようと企む新興の宗教団体による仕業であることが明らかになる。
 信者たちを続々とハヤブサ地区に移住させようとする宗教団体に対し、太郎たち消防団の面々はそれを阻止しようと立ち上がる。

 ストーリーは、山梨県上九一色村に信者が居住する施設を建設し、修行やサリン製造などの拠点としたオウム真理教事件を思い起こさせるものだ。

 ドラマの中盤以降では、この宗教団体の幹部たちによる嘘や悪行が次々と明らかになる。視聴者は、のどかなハヤブサ地区の平和を守るために奮闘する主人公たちに共感し、この勧善懲悪の物語の行方を見守ることになるのだ。


 今から10年以上も前のことだが、私の勤務先の近くで精神障害者用のグループホームを建設する計画が持ち上がった。それに対して一部の住民が強硬に反対し、街の至る所に看板や横断幕が設置されたことがある。

 結局、施設建設の計画は断念された。地域の中には、未だにそのしこりが残っているようだ。


 地域社会を守ろうとする者やそれに同化しようとする者を善、一方の余所者(よそもの)を悪と決めつける図式は、明快である反面、危険でもある。

 もしも余所者を悪だとするならば、世の中にいる少数派はすべてが悪ということになってしまう。そこから生まれるのは差別や分断、憎しみでしかないだろう。

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