「官僚離れ」の原因
国家公務員を目指す若者が減り続けている。人事院によると、2022年度の総合職試験の申込者は1万8295人に留まり、2011年度の2万7567人に比べて33.6%の減少になっている。これとは別に、若手官僚が早期退職をするケースも増加の一途をたどっているという。
こうした「官僚離れ」が加速している原因の一つは、その「長時間労働」にあるだろう。国会対応、関係者への連絡調整や根回し、膨大な量の文書作成などのために、深夜まで及ぶ残業が何日も続くというような働き方が、若者たちから敬遠されていることは間違いない。
また、民間企業に比べて初任給が低いことや、昇進や昇給のペースが遅いことなどが、相対的に官僚の仕事に対する魅力を低下させていることも否めないだろう。
しかし、原因は他にもありそうだ。
先日、キャリア官僚の職を中途で辞し、地方公務員に再就職した30代前半の男性と話をする機会があった。その彼が「官僚離れ」の原因だとして挙げていたのは、「官邸による官僚支配」である。
安倍・菅政権下では、内閣官房に置かれた内閣人事局が各省庁の局長や審議官クラスの人事を掌握する制度が確立された。これにより、官僚が政権与党に忖度せざるを得ない仕組みが出来上がってしまった、というのである。
その結果として、各省庁の幹部が首相や閣僚などの顔色を窺い、政治家の思いつきのような政策に振り回されることも少なくないという。そんな上司たちの様子を間近で見ていた彼は、「気持ちが萎えてしまった」のだそうだ。
ちなみに、今の地方公務員としての仕事については、「国での仕事に比べれば小規模ですが、自分たちで施策の企画や立案ができるので、ずっとやりがいがあります」と語っていた。
これは、あくまでも一人の「元官僚」の声に過ぎない。
だが、本気で「官僚離れ」を食い止めようとするのであれば、こうした若者たちの本音に耳を傾けてみる必要があるのではないだろうか。
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