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「二重遭難」

「二重遭難」という言葉がある。登山などで遭難者を救助するために出発した救援隊が、自分たちも遭難してしまうことをいう。

 たとえば、冬山で雪崩に巻き込まれた遭難者の救助や捜索に当たっていた救助隊員が、同じように雪崩に巻き込まれてしまうという事案は毎年のように起きている。

 また、最近ではヘリコプターによる救助活動の途中で、ヘリが何らかの原因で墜落し、レスキュー隊員が死亡してしまうという事故も珍しくない。


 近年は学校現場でも「二重遭難」と呼べる状況が生じている。たとえば、こんなケースだ。

・担任が心身の不調などから休暇に入る。

・その代替の教員が見つからないため、教頭(副校長)や教務主任などが担任の代わりを務めたり、1人の教員が複数のクラスを掛け持ちで見たりする。

・代わりを務めたり掛け持ちをしたりしていた者が、過労のために休暇に入る。

 ・・・最近、ある小学校の校長から「授業研究会の講師を引き受けてほしい」という依頼を受けた。

 だが、その学校の様子について話を聞いているうちに、全校で14学級のうちの3学級が「欠員」の状態になっており、その穴埋めをするために教職員が疲弊しているということがわかってきた。

 私からは、
「授業研究をすることは大切だが、今はそれ以上に優先するべきことがあるのではないか。無理をしてまで授業研究会をする必要はないのではないか」
 ということをお伝えし、講師の件もお断りした。

 その後、この校長は今年度の授業研究会をすべて中止にしたという。

 ・・・もしも、この校長が前例や面子などにこだわっていたら、「二重」どころか「三重」「四重」の遭難が起きていたかもしれない、と思う。

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