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「三年寝太郎」

「三年寝太郎」という昔話がある。

 村の庄屋の息子である太郎は、ろくに仕事もせずに寝てばかりいたため、村の人々から「三年寝太郎」と呼ばれて蔑まれていた。

 そんな生活を3年ほど続けていたある日のことだ。突然、太郎は父親に、
「千石船と船いっぱいの草履を用意してほしい」
 と頼んだ。

 父親は怪訝に思いながらも、息子の願いを聞き入れて千石船を造り、船いっぱいに草履を積んで用意をした。

 すると太郎は、その船に乗ってどこかへ旅立ってしまった。

 それから数十日して、太郎は村に戻ってきたが、船の中の草履はすべてボロボロになっていた。

 太郎は父親に、
「今度は大きな桶を用意してほしい」
 と頼んだ。

 用意された桶を使って太郎が草履を洗いはじめると、なんと泥の中から大量の砂金が出てきたのだ。

 実は、太郎は船で佐渡島の金山に渡っていて、金山で働く人々が履き古した草履を「新品と交換する」と宣伝して回収し、そこに付着した砂金を集めていたのだった。

 その後、太郎は集めた砂金を元手に田畑を開墾して農民たちに分け与え、村の英雄として褒め称えられたということだ。

 この話は、ベンチャービジネスの成功事例として現代でも通用するだろう。

 また、何か斬新なことを始めるためには、入念に計画を練るための準備期間が必要だという読み方もできよう。

 家庭教育の観点では、子どもの可能性を信じて待ち続け、必要な支援をしていくことの大切さを説いているともいえる。

 だが、それは太郎の父親に庄屋という地位と財力があったからできたことであって、一般的な農民の家に生まれていたら不可能だったかもしれない。親の社会的地位や収入による格差の問題は、この時代から存在していたということも読み取れる。


 しかし、一番大切なのは、
「太郎のようなサクセス・ストーリーは、いつの時代にも稀である」
 ということだろう。

 寝ているだけで何かが上手くいくほど、世の中は甘くない。それはいつの時代でも同じなのである。

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