見出し画像

Netflix『サンダーランドこそ我が人生』S2:行け、男たちよ

 試合観戦ができない状況を踏まえ、配信サイト等で鑑賞することができるスポーツドキュメンタリー・映画を紹介する投稿を再開していこうと思う。

画像1

 今回は、Netflixで4月1日から配信開始されたドキュメンタリーシリーズ『サンダーランドこそ我が人生』シーズン2(以下「S2」という)を紹介したいと思う。

 本シリーズは、イングランド北東部の都市をホームタウンとするプロホットボールクラブ・サンダーランドAFC(以下「サンダーランド」)に密着したドキュメンタリーとなっている。

 シーズン1では、プレミアリーグ復帰を目指すクラブの2部リーグでの戦いに密着した内容となっていたが、リーグ戦の成績低迷・クラブの経営難の混乱の末、2年連続の降格と経営者の交代という結末を迎えてしまう。

〇 経営陣に課せられた困難なミッション

画像2

 S2は、新たに経営権を取得した2人の共同経営者の語りを中心に、クラブは2部昇格と赤字体質からの経営状態の改善を目指すことになる。このため、S2ではプロクラブの経営に関する話題が多く取り上げられている。海外サッカーに関心が無くとも、クラブ経営等に関心のある方や、プロスポーツクラブへの就職を考えている方にも楽しめる内容となっている。


画像3

   「限られたリソースで目標を達成する」というミッションは、弱肉強食のマネーゲームが繰り広げられるフットボールの世界において至難の業だ。ピッチ上で結果を残すためには、フロントが指名した指揮官のオーダーに応え、選手を集めて戦えるチーム作り=投資を進めなければならないが、投資額を回収するための収益構造が投資対象に必ずしも直結していないからだ。

 本作におけるサンダーランドに置き換えると、経営状態を改善するため高額選手を放出する等、トップチームの選手を大幅に入れ替えた。新指揮官にチームを預けたことから、継続性のない新体制で戦わなければならない。経営面の苦境がピッチ内にも反映されてしまうという事例だ。

 それでも、サンダーランドは、前季からの主力選手であるアイルランド代表・マクギーディー(セルティックでは中村俊輔のチームメイトだった)をはじめとする実績ある選手と、アカデミー出身の若手選手たちの活躍で好調な滑り出しを見せる。S1のデスマーチのような展開を見ていた視聴者レベルでも、3部とはいえ、クラブにとっては天国のような状態だ。

 が、多くのサッカーファンなら理解できるだろうが、シーズン中の良い時期というのは長く続かないのである(遠い目)。若手選手が活躍すれば、上位リーグ、あるいは海外リーグのステップアップを図ろうとすべく代理人が暗躍する。その流れに巻き込まれてしまう。S1もそうだが、こうした交渉の立ち回りをインサイドから見れることも本作の魅力だと思うが、サポ視点で見ると歯がゆい気持ちになるだろう。

〇 プライド・情熱・忠誠心

画像4

 こうした苦難を迎えながらも、エピソードの終盤とともに2018-19シーズンは佳境を迎える。サンダーランドは、昇格争いを繰り広げながら、リーグ1・リーグ2(3・4部)所属チームによるカップ戦(EFLトロフィー)を勝ち上がっていく。

 大きな山場を迎え、カメラはクラブを愛するサポーターたちに密着の中心に据える。サンダーランドの街と、苦しい時を含めてクラブを愛する人々たちの熱い思いが語られる。個人的には、各地での従軍経験のある軍人のサポが話していた、軍隊以外で「所属感を感じる場所」という言葉が印象に残っていた。地元のクラブが、地域に対するプライドや忠誠心を宿す存在であることを如実に伝えてくれる言葉だ。

 経営陣も同じ視点に立っている。現在の経営状況を脱し、クラブの利益をサポーターに還元してこそ「我々のクラブ」と言える存在になれるのだと強調する。サポの情熱に敬意を表し、その期待に応えようと苦闘を続ける。

画像5

 本シリーズの素晴らしいと思う部分はフットボールを愛する人々の生の声を伝えてきたことだ。サッカーを問わず、何かを応援している経験を持つ者なら老若男女問わず共感できると思う。「フットボールは人生だ」と述べる彼らが迎えた結末がどのようなものであったか?是非作品で見てほしい。

 一方、こうした人々の日常からフットボールを取り上げられている現状をイメージすると心が痛む。しかしながら、ピッチを取り巻く環境が大きく変わっても、クラブと街には100年以上積み上げてきた歴史がある。再びスタジアムから、このような声が聞こえてくると確信している。

COME ON LADS!!! (行け、男たちよ!!)

画像6

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?