【養成所】 初めての養成所ライブ

 去る夏の日、養成所に入ってから初めてのライブが高円寺であった。養成所のみんながそのライブに向けて、日々練習をしていた。爽やかな夏だった。




 ライブ前々日

 私たちのコンビは、ライブの二日前にネタができあがった。その場のノリで決められた展開も多くて、果たしてどうなることかと思っていた。それまで何をしていたかと言われると、ただひたすらに相方と二人で空回りをしていた。チェーンの壊れた自転車を、地面を蹴って何とか漕げているように見せかける日々だった。



 ライブ前日

 ライブの前日とは思えないほど、気持ちが浮ついていて、夢の中にいるようだった。これは決して比喩なんかじゃなくて、私は緊張と期待で少しおかしくなっていたと思うんだ。

 この日は、昼過ぎからコンビで稽古場に乗り込んだ。腹が減ってはなんとやら、ということで、二人でモチャモチャと腹ごしらえをして、まずは幕間で行なうクイズの練習をする。この時点で、昨日完成したネタを一度も合わせていないので、私の緊張はピークに達していた。

 それでも、同じクラスのみんなと話すと楽しい。好き勝手に場所を陣取っては地べたに座り込んで、それぞれのネタを見せ合うあの画は、まるで文化祭の前日のようだった。頻繁に名前を出している気がするが、グットタイム喫茶の三人が今日も楽しそうでよかった。

 私たちは、私が演劇部出身であることを活かした漫才を披露する予定だった。その流れで、演劇部出身の数名と、演劇部あるあるで盛り上がる。一番同意を得たのは、「必然的に男女の距離が近くなるけど、部内恋愛をすると部内が無茶苦茶になるから、やめたほうがいい」であった。本当に、やめたほうがいい。

 それから相方とネタを合わせて、大丈夫そうなことを確認した。相方と新宿駅で解散する。翌日は朝が早かったので、満員電車に揉まれて体調を崩しても嫌だな、と思い、近くのホテルに泊まることにした。私はビジネスホテルの狭い部屋が好きらしい。

 寝るまでに何度も一人で漫才の練習をする。少しだけ、舞台に立つことが怖いと思う。



 ライブ当日

 ライブ当日だ、と叫びながら起きるやいなや、買っておいた薄皮あんぱんを冷蔵庫から引っ張り出して、食べる。彼らが五個入りだったのはすでに過去のことだ。朝風呂に入ろうと思ってバスタオルを干しておいたが、結局時間が無くて入らなかった。

 歩く。朝ということもあって、暑さはそれなりに抑えられていた。小屋入り(言ってみたかった)を、する。以下、ライブの詳細は控えるが、楽屋にて、今まで話したことがない人と話せてよかった。本番前は、ただひたすらに楽しみだった。四年ぶりに舞台に立てる、それだけだった。

 舞台から見る客席ってこんなに暗かったんだな、と思い返す。まるで高校一年生に戻ったようだ。ウケていたかは分からない、ただ、足がガクガクと震えていて、倒れないようにすることに必死だった。

 ライブが終わった。観に来てくださった皆様、ライブ関係者の皆様、本当にありがとうございました。同期のみんな、お疲れ様でした。

 夏休みを挟んでまた授業の日々だ、もっと面白くなりたい。





小林優希

 

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