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M3 Proに勝利。いまだに最強クラスのM1 Mac mini

自作の、地道で普通の内容のベンチマークを走らせてみたら、M1 Mac miniがMacBook Pro(M3 Pro、RAM 36GB)に勝ってしまった。どうしよう。


「頭がおかしい」と言う人がいるかもしれないので説明

まず、Apple Siliconの第1世代である「M1」とは何か?

それは、コンピュータの拡張性とか可能性を全部投げ捨てて、「コンピュータをワンチップですべて構成したい」というAppleの野望が、ストレートに実現し過ぎてしまった謎SoC(System on Chip)です。

そして、その最小単位のコンピュータは、RAM 16GBでGPUは速いものの外付けGPUと同じか、最上位のGPUには勝てないぐらい。バッテリー寿命はやたらともつ、無駄のない世界。

それだとRAMが少なすぎるとかムービー書き出し処理速度が不十分だというユーザーに向けて、複数のチップを貼り合わせて拡張(M1 Max, Pro, Ultra)。

ただ、そうした貼り合わせチップだと特定の(ムービー書き出しなどの)処理は速くなるものの、日常的な処理はむしろ元のM1よりも遅くなる、という傾向が見えてきました。さらに、貼り合わせ枚数が多い大規模(=高性能、高額)SoCほど処理速度が低下するという傾向もわかってきました。

もう少しくわしい説明

M1世代のSoCについては、実際にAppleScriptのプログラムを書いて走らせてみたところ、メディアエンジンやGPUに依存しない、普通のデータ処理を行う程度の、並列処理などを利用しないプログラムだと、一番下位のM1が最速で、上位SoCの数倍(2〜6倍)ぐらいの速度で処理したという結果が得られました

  • RAMが16GBもあればいい

  • ディスプレイも2枚までしかつながない

  • ムービー編集なんかやらない、ゲームはゲーム機でやるからいいよ

というユーザーには、エントリーレベルであるM1が最強にして最適

むしろ、用もないのに上位モデルなんか購入した日には、「なんか遅い」と感じてしまうかもしれません(それでも十分に速いのでバレないでしょう)。

しかも、むしろエントリーレベルのマシンが上位機種よりも速いまである。さすがにRAMが8GBの構成は「冗談」でしかないので、16GBの構成を選んだユーザーが大正解。

いまだに最強クラスのM1を超えるために

さて、M1が高速なのはよいのですが、上位SoC(M1 Max/Pro/Ultra)がマルチメディア処理以外はM1より大幅に低速なのはどうしたものか。

知人がMacBook Pro M3 Proモデルを購入したのでベンチマークを試してみてくれました。ニューマシンがM1よりも遅い結果を出すかもしれない、と事前に説明したうえで試してくださった、心の広い知人に感謝を。

配列の順列組み合わせ計算を行うAppleScriptによるベンチマーク。並列処理化しにくい内容。グラフはバーが短いほど高速。いまだにM1が最強。

その結果、順列組み合わせ計算(M1世代でも、下位SoCと上位SoCでそれほどスピードに差が出なかった処理。M1のほうが速いことは言うまでもない)において、わずかにM1のほうが高速であることが判明。

いや、まずいでしょこれ。

  M1:Pコア 3.2GHz
  M3 Pro:Pコア 4.1GHz

動作クロックを4.1GHzまで上げて、それでもM1より速くないM3 Proが。M1と同じ3.2GHzで動かしたら、確実にM1より遅い結果になることが想像されます。

最下位機種が最強という謎ラインナップ

ムービー編集とかゲームとか、そういう処理についてはたしかに新しくて値段が高い製品(M3 Pro)が高速になっているものの、「それ以外」の処理がM1とほぼ同じというのはどうなんでしょう。

拡張性もRAM容量もすべてあきらめて、未来も何も捨てて、可能性もすべて割り切って使う日常の矮小な道具としての「パソコン」というものを具現化したM1。そこまですべて諦めると(安くて)速く、電力効率もよく処理できるというのは、まさに逆転の発想というべきなのか。

大型コンピュータの簡略版として誕生したPCが、さらにその構成を簡略化して別のもの、たとえていえば「パソコン」が「パソ」みたいな簡略版になった、みたいな存在に見えます。パーソナルコンピュータの可能性をApple I/IIで世界に問うたはずのAppleが、その可能性をみずから否定することで製品としての価値を爆上げした、なんかそういう存在に見えます、M1 Mac。

拡張とかアップデートするには、新しい製品に買い替えて欲しいという斬新なスタイル。それが、Apple Silicon Mac。でも、「いちばん下の製品で満足できる使い方しかしないユーザー」にとっては、安くて上位機種よりも高速というわけのわからない充実感を得られるのでいいのかも。

M1からM2への移行であまり体感できるほどの処理性能の差は感じられないとは理解していたのですが、M3世代でも上位SoCが2世代前の最底辺のM1に追いつきかけたものの……追い抜けないレベルだとは思わなかった

デスクの前で仕事をしている分には、M1最強! で済むものの……やはりノート型がないと打ち合わせなどで困る……とは思うものの、おそらくM3 MacBook Airというのは、M1 Mac miniよりも速くない

かといって、M1 MacBook Airは、発売から3年ぐらい経過しているのでバッテリーとか外装に(中古だと)問題が出てくる頃。

そうすると、M3 MacBook Airが出てきても、型落ちで安くなるはずのM2 MacBook Airのほうがよさそうだ、という割り切りもできるのかもしれません。


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