東京ってなんだろう
有名なブロガーとかも言っているけど、東京は消耗する街だ。多くの人々は通勤するだけで体力を奪われ、職場で仕事に時間を奪われ、帰路につく頃にはたいてい残りHPが一桁まで低下している。
23区内で働くようになって干支が一周する時間が経過した。そのうち1年8ヶ月は九州の工場に出向していたので、地方で働らき始めた際と、都会に戻った際、体内時計を調整することがこんなに難しいのかと困惑した。
東京近郊で生活をしていると、自分は社会の歯車である錯覚に陥る。考えるよりもただ回っていれば良いのではないか、満員電車の中では感情も感覚も捨ててベルトコンベアに載せられた部品になってしまえば良いのではないか。
ビルに囲まれた空は狭く、風が吹けば勢いが増幅され、雷が鳴れば反響して妙に金属的な音に変換されてしまう。街にはテレスクリーンが溢れ、歯車であるぼくは常に監視されている。歯車なんだから歯が欠けたら交換するぜ、替えはいくらでも居るからなと言われているような。
サラリーマンなんだから黙っていうこと聞きな、媚びればいいじゃん、空気読めよ、ストレス耐性高めろよ。今度飲みに連れてくよ、愚痴は聞くけど割り勘でな。
東京近郊に住まいを構えようものなら、家より土地がはるかに高額になる。23区内に駐車場を借りる価格は、地方でアパートを借りるのと変わらない。
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九州に行くようになって驚いたのは、東京との感覚的な時差が1時間あることだ。この時期、東京は朝5時には明るくなるが、九州の夜明けは朝6時。冬は朝7時になってようやく夜が明ける。
始業時間は8時半、うっかり寝過ごしそうになることが何度かあった。工場なのでフレックスタイム制は適用されず、朝から走ったこともある。
工場と最寄りの駅の距離は5キロほど。バスやタクシーを使うこともあったが、帰りは敢えて歩くようにした。田舎の道は結構暗く、垣根から飛び出した未確認生物(たぶんタヌキ)に度肝を抜かれたこともあった。
当たり前のことなんだけど田舎の夜は暗く、闇は深くてちと怖い。
けれど目の前に田んぼがある家で育ったぼくにとって、こんな環境の方がずっと自然で、都会に居るより心地良かった。
九州の良いところは食べ物が安くて美味しいことだ。焼き鳥は1本60円~とかで食べられるお店があるし、からあげのお店がそこらじゅうに存在してる。魚は見慣れないものも多いけど、これまた安くて新鮮だった。
単身赴任で家族に会えないツラさはあったけど、空気は美味しく、時間はゆっくりと流れていた。
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知ってる?高層マンションでは流産する確率が高くなることを。都会で耳をすますと様々な機器が絶え間なく動作しているノイズが聞こえてくることを。
宮崎駿は「未来少年コナン」を作った時から知っていたのだ。科学が発達したらそいつを悪用する人間が現れて、結局は身を滅ぼすことを。
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最後に本の紹介を。
2014年に亡くなったシニカルな哲学者、木田元の本。『技術の正体』
読んだ人がいたら感想が聞きたいな。