二十歳の一年間でした留学の話や、昔とこれからのことを書きます。 どこにいたとしても物を…

二十歳の一年間でした留学の話や、昔とこれからのことを書きます。 どこにいたとしても物を書いていたい。

最近の記事

負けず嫌いなんだ、と言えるひとが羨ましい

昔から だれかに負けている 見た目のかわいさだとか 心の広さだとか 頭の良さだとか 気配りできるかとか 人を愛せるか とか 私は、自分が なんだってできる という気になるときもあれば、 なんだってできないんだ という気になるときもある。 私はあの子みたいになりたい。 綺麗な歯で顔をくしゃくしゃにして笑いたいし、 かわいらしい声で人に話しかけたかった。 あの人みたいに、もっと英語が上手だったら、 学ぶ努力を続けられたら、 恐れず挑戦できたら、

    • 夏に似た温度

      目が覚めた。 扇風機がゆったりと回っていて現実味があり、身体が冷えている。 草と水が混じったような匂いがする。外はまだ暗いから、きっと朝の6時前だろう。 ここは日本の自宅ではなく、フィジーという南の国のとある一軒家である。 ホームステイをして借りたこの部屋には、しっかりとした窓は無く、古びた網戸の隙間からはいつも、外の匂いが漂ってくる。私はこの近くの語学学校に通っているので、毎朝6時半には目を覚さなければいけない。ふと、リビングから音がする。 ペタ、ペタ、ペタ 裸足で

      • 短編小説『絵画の心臓』③

         「あんた名前は」 おばあさんが私に尋ねる。今日は仕事は休みなのだが、おばあさんから部屋の整理をしてほしいと頼まれてお邪魔している。おばあさんは部屋の隅に座ってテレビを見ていた。身寄りがなく、 「いつ死んでもいいようにしたい。」 とおばあさんはいつも独り言のように言った。 私は物の整理をしながら答える。 「中谷、律子です。」 「中谷さんは、お化粧しないの?顔立ちが綺麗なのにさ」  いきなり褒められるので、少しびっくりしてしまう。 「ああ、えっと、あまり化粧とかした

        • 短編小説『絵画の心臓』②

          浅葱色の花瓶に、薔薇だろうか、真っ赤な花束が生けられている。棚の上に飾られた花を、水色の朝の光が包んでいる。きっちりと整えられた純白のシーツに影が乗り、一部の赤は日を嫌い影を向いて、また一部の赤は日を好み明快に咲き誇っている。光と影の共存。明るさと寂しさが一つの花瓶に収まっているその絵から、私は目が離せなかった。私が絵画を見つめたまま突っ立っている間に、おばあさんはよろよろと机上を片付け、肉じゃがの入った鍋を置いた。後ろを通るその匂いで、自分の意識がおばあさんから遠のいていた

        負けず嫌いなんだ、と言えるひとが羨ましい

          短編小説『絵画の心臓』①

          澄んだ空に、雲が少しずつ進んでいくのが分かる。 海沿いを車で走る。今日も、大量の荷物を乗せて。  郵便局の仕事を始めたのは約十年前のことだった。 当時私は高校を卒業したばかりで、実家近くで会社員として働いていたのだが、社内で要求される仲睦まじいコミュニケーションの輪に息苦しさを感じて、二年ほどで退職した。 それから数ヶ月は実家で祖父の身の回りの世話をしながらのんびりしていたが、結局は認知症が進み施設に入ったため、私も仕事を見つけて実家を出る機会になった。 その時から始めた仕

          短編小説『絵画の心臓』①

          駅のホーム、梅雨、世界の停滞

          今週はずっと雨が降る 上下バラバラのパジャマを着て、少し残ったパーマに触れる。冷たい。 シェアハウスの共有スペースを利用できるのは午前1時までだが、暗黙の了解として23時以降にドライヤーの轟音を響かせるのは申し訳ない。 この数ヶ月間の世界の停滞とともに、 自分もこのまま、ここにいてもいいような気がしてくる。 目的もない道しるべもない 時間だけが止まらず進み続ける 第二の波か、第三の波が沈んで また外の世界が前に進む 同じ土俵にいるかと思えた他人が いつのまにか頂上に向

          駅のホーム、梅雨、世界の停滞

          悲しみの前にあるもの

          先週、先生が亡くなった。 高校一年生、二年生と担任をしてもらった先生だった。 周りの同級生たちは悲しんで、 惜しむような声を上げていたのだが 私はなぜかいつも、こういうときに悲しくなれなくて ただただ「そうなんだ」と焦点を合わせられないまま時間の流れに身を任せていた。 まだ高校に入学したての頃、 皆が友達を作り部活見学をしていた頃 入部希望の提出期限が今日までだとその先生は言った。 また帰りのホームルームで、 「このクラスの中で一人だけ入部希望を出していない奴がいる。

          悲しみの前にあるもの

          自己顕示欲を捨てられたら

          自己顕示欲を捨てられたら あなたはその時間を何にあてる? 突然に雨が降る。 一粒が大きく、強い。 先月に日本に無事帰国してから、 私は突然「Instagramを見る時間を減らそう」と思い立った。 この一年、異国の地で過ごすその生活の臨場感を人に見せたくてたくさん投稿した。 そのメインアカウントは約四年前から使っていて、高校や専門学校の友達、留学で知り合った人たちなど大勢が見ていた。 そもそも文章を書くこと、写真を撮ることが好きだった私はそれを投稿しては「いいな」と思わ

          自己顕示欲を捨てられたら

          何もしない星の日曜日

          新型肺炎が蔓延している一つの星の日曜日。 日本という国では桜の花が散って葉桜が目立つ。 私という一人に焦点を当てれば、今日は何もしない日だった。 別に今日に限って「何もしない」を実行している訳ではないのだけど、今日は特別することリストのことも何も考えず「何もしない」のだ。 私たちは大人になるにつれ、社会から、社会という価値観にはまった人たちから 「自己の為になることをする」を要求される。 それは時間、お金、人力を大事にするが故の結果だと思う。 有意義な生活を送る

          何もしない星の日曜日

          手紙に染みた時間と距離の話

          ちょうど一年前の春、 私は留学のため日本を発った。 フィジーのホームステイ先で書いたポストカードや、 オーストラリアで仕事の合間に書いたもの、 ニュージーランドでの一人旅で散歩をしながら撮った写真たち、 この一年間で私は、30通あまりの手紙を日本へ送った。 手紙を書くということ。 今までの私にとっては、相手に伝えたいメッセージが明確なことが多かった。 誕生日には日頃の感謝を伝え、 クリスマスや年末には相手の幸せを祈る。 しかしこの日常の中で生まれた手紙たちは、 殴り

          手紙に染みた時間と距離の話

          塵が積もって山になった恋愛の話

          1時間前、シェアメイトの咽び泣く声で目が覚めた。 いつも通り硬いベッドの居心地が悪くてリビングに来た。 「大丈夫?」と聞くと彼女は静かに頷いた。 “彼女が泣く原因” それはもうひとつしか思いつかなかったが改めて聞くと、やはり 「彼氏と別れた」という。 彼女には国境を超えた遠距離交際中の14歳年下の彼氏がいた。 その彼とは毎晩電話を繋ぎ、 「今日は何する、どこへ行く。 明日は何をし、何を食べる。」 そんなことをずっと話していた。 その彼氏との方が年齢が近い私にとっ

          塵が積もって山になった恋愛の話

          私たちの静電気の話

          雨です。 夏だなぁ。 42度の真っ昼間に乗る路面電車は蒸し暑い。 逆上せながら外を眺める。 公園のそばを歩く人たちの肌は光に照らされ白く輝いて、影は真下にストンと落ちている。 今回のお題は、 男友達のKくんから 「男女の友情について」 まず、最初に、 私はナシ派です。 ・・・ 私自身の友達男女比は5:5になるくらい実は男の子とも関わっていて、 人としてすごく好きな人たちばかりだから基本は男女の友情アリ派だなって見えると思うんだけど 全ての男友達に対してそういう関係を想

          私たちの静電気の話

          近寄りがたいひとの話

          こんにちは。雨です。 こちらは春、おやつの時間です。 木漏れ日が降る中、近所のマーケットに行ってまいりました。 さて今日は一つ目にきたお題 長い友人であるOさんから 「主任が怖いです。 たまに無視されますし陰口言われます。 どうしたら少しでも良い関係が出来ますかね?」 に返答します。 私の周りの人たち、短大や専門学校の二年修了課程を経て就職した新社会人 たぶんいまいっぱい悩んだりしてるんだと思います。 正直、社会マジ怖え。 場所によってはもっと怖い上司もいるんだろう

          近寄りがたいひとの話

          小っ恥ずかしい話

          初めまして。雨です。 本名で活動するのもペンネームで活動するのもどちらも小っ恥ずかしいのですが、どちらにせよバレてはしまうので後者の方でこれからもご挨拶させていただきます。 早生まれで、のち何ヶ月かで二十一歳になります。 高校卒業後専門学校に通い、就職を避けるように他国に逃亡。 いま何してるの? 現在はオーストラリアのメルボルンにてワーキングホリデー中。 旅のエッセイを自分も書きたくて、留学、してみた。 さて、この度毎晩の日記活動頻度を下げる代わりに、 こちらのサイトで

          小っ恥ずかしい話