短編小説『絵画の心臓』②
浅葱色の花瓶に、薔薇だろうか、真っ赤な花束が生けられている。棚の上に飾られた花を、水色の朝の光が包んでいる。きっちりと整えられた純白のシーツに影が乗り、一部の赤は日を嫌い影を向いて、また一部の赤は日を好み明快に咲き誇っている。光と影の共存。明るさと寂しさが一つの花瓶に収まっているその絵から、私は目が離せなかった。私が絵画を見つめたまま突っ立っている間に、おばあさんはよろよろと机上を片付け、肉じゃがの入った鍋を置いた。後ろを通るその匂いで、自分の意識がおばあさんから遠のいていた