待ち合わせ場所は新宿三丁目駅から歩いて少しすると見えてくる 大学の同期が夢を叶えたハンドドリップのコーヒー屋さんだった 待ち合わせの相手が間違えて別の番号の出口からでてしまったと連絡があり コーヒー屋さんへ向かう足を止め、伊勢丹がある十字路へ急ぐ 「伊勢丹の近くの、三菱UFJ銀行にいます」 銀行の出入口に腰掛け、わたしを待つ後ろ姿の彼を今でも覚えている それまで急いでいたのに、わざとわたしは青信号を見送った 高鳴る胸がおさまるのを待ってわたしは銀行の中へはいる ヒールの音
あれは何年前のことだろうか 茹だるような熱気が夜の角へ消え始めた頃 空席の目立つ電車へ乗り込み ひとり、水族館へ向かった 人が少ないせいか冷房の効きすぎた車内 汗が引いて薄ら寒い体を携え、水族館へ歩いた 家族連れ、恋人同士、同じおひとりさまが並ぶ背中の間で待ち 「大人ひとり」のボタンを押して発券して入館する、その横を さめの絵がかかれた白いシャツをきた男の子が一目散に館内へ駆けてゆき 大きな水槽の前でぴたりと足を止めた 「さめ、ここ!」と振り返る男の子 一瞬さめに会いに来た