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小考察シリーズ副読本:時代の風雲児、アナカラーハンデス

まえがき

新弾発売後、凄まじい勢いで勝ちまくっているデッキが存在する。

【青魔導具】【樹食墓地ソース】【JO退化】などのデッキが鎬を削るオリジナル環境に突如出現し、勝ちを積み上げているデッキ……

そう、【アナカラーハンデス】だ。

7/10以降にいつも通りの環境全体を総括する記事を出す予定だったが、流石にここまで勝っているのを一週間指をくわえて見ていられないので、急遽紹介記事を執筆することにした。

主に環境全体での立ち位置、強み、今後の展望について考察していこうと思う。それでは。

1.そもそもアナカラーハンデスって?

ちょっと昔のやつ

根本は"悪魔妖精 ベラドンナ""特攻人形 ジェニー"などの2コストハンデスを"有象夢造"で使い回すことで対面のリソースを削るデッキである。

"デッドダムド"による盤面除去も備え、シールドトリガーこそ薄いものの一度主導権を握れば容易には崩されない。

フィニッシュも”Q.Q.QX”"アクア・ベララー"を用いるため、付け入る隙を相手に与えない。正に現代のハンデスと言うべきデッキだ。

ところが、重大な弱点があった。

1つは、【赤単我我我】及び【JO退化】対面がとにかく厳しいこと。どちらもこちらがリソースを刈り取る前にキルを通してしまえるデッキである。

また、これらのデッキは”カンゴク入道””進化設計図”などのリソース確保手段を備えるためにハンデスの通りもそこまで良いとは言えない。

もう1つは、メインで採用されていた”とこしえの超人””ベイB セガ―レ”が現在のオリジナル環境に刺さるメタとは言い難い点である。

”とこしえの超人”は外部ゾーンを使わず、更に手札から動く踏み倒しコンボが幅を利かせるオリジナル環境にはかなり刺さりが悪い。

"ベイB セガ―レ"は一見【赤単我我我】”我我我ガイアールブランド”などを止められるため、強いように見えるが伸びたマナから再び展開されるなど、実は気休め程度にしかなっていない。

このように、環境に対する強みが薄いデッキとしてしばらく不遇であった【アナカラーハンデス】だが、新弾で強力なメタクリーチャーを手に入れたことにより、唐突にその勢力を伸ばし始める。

サンプルリストがこちら。

見ての通り、基盤は殆どそのままにメタクリーチャーの枠を入れ替えたような構築となっている。このメタクリーチャーが有効に作用している、というわけだが……

それが以下の2体である。

次章では、この2体がどのように環境へ作用しているかを見ていこう。





2.新規メタカードは何を変えたか


a.飛ベル津バサ「曲通風」

よく見ると格好いい

このクリーチャーは、「相手が山札を表向きにする/見る効果」を「山札の一番上を表向きにする」へ置換する能力を持つ。

【JO退化】”禁断英雄モモキングダムX”はJOをサーチできなくなるし、”進化設計図”などのリソース札も最大一枚回収しかできなくなる。

また、【樹食墓地ソース】”巨大設計図”、汎用カードでは“天災 デドダム””切札勝太&カツキング~熱血の物語~”など、 かなり多くのデッキが動きに支障をきたすこととなる。

注意点としては、あくまで見る・表向きにする効果にしか作用しない。”終焉の開闢””百鬼の邪王門”などの直接墓地に送る効果、”Dis ゾロスター”などの直接ゾーンへ振り分ける効果には無力である。

とはいえ、環境を牛耳るサーチ・大量手札補充に待ったを掛けるカードであり、ハンデス以外にも【アナカラーデッドダムド】【ラッカ鬼羅Star】などに採用されて実績を積み上げている。

最大の弱点は"2コストであること"だろう。”モモキングダムX”や”進化・巨大設計図”も2コストであり、先攻を取ればこのカードを出される前に悠々とプレイすることができる。

つまり、デッキに4枚しかないこのカードを先攻でプレイできなければ、相手のビッグアクションを許してしまうということだ。

そのため、このカードは【アナカラーハンデス】というデッキにおいて、「不利を覆す」というよりは「無理対面に勝ち筋を作る」程度に考えておく必要がある。

先攻を取った相手の通常の動きに対して為す術を持っていない、というのは重要で、そのデッキの動きを完全に損なうまでには至っていないメタでしかないとも言える。

そのため私は、現状の環境に激烈に刺さってはいるが、裏を返せば現在の活躍がこのカードができる最大のパフォーマンスではないだろうか、と考えている。

b.若き大長老 アプル

名前は若いがいぶし銀

「相手のカードがマナと墓地を離れなくなる」「墓地・マナからの呪文の詠唱を禁じる」という2つの効果を持つ。

一見地味に見えるが、前者の効果は「マナ進化・墓地進化」を完全に封殺するため、【退化】デッキの動きを大きく縛ることができる。

また、【青t黒スコーラー】”セイレーン・コンチェルト”【4C邪王門】”百鬼の邪王門”による展開・カウンターや、【青魔導具】”ガル・ラガンザーク”の「夢幻無月の門」なども使わせない(参照)ため、見た目以上に刺さる範囲が広いと言えるだろう。

また、後者の効果も汎用除去として多くのデッキに搭載される”絶望と反魂と滅殺の決断”【5Cネバー】”ザーディクリカ””ソーシャル・マニフェストⅡ世”の挙動を大きく縛るため、かなり強力である。

本デッキにおいては除去されるだけなら”有象夢造”で簡単に立て直しが効くため、序盤よりもハンデスでリソースを枯らした中終盤で強みを発揮するカードだ。

そのため、実は”曲通風”よりもハンデスと相性が良いのがこのカードである。あちらが「無理対面に勝ち筋を作るカード」なら、こちらは「有利盤面を更に有利に持ち込むカード」と言えるだろう。

c.メタカードの総評

若干否定的な見方もしたが、現環境には非常にマッチしている。結局、先攻で"曲通風"を出せば大きく遅延することができるデッキは多いし、そうなればハンデスが強力に刺さるようになる。

また、“有象夢造”による蘇生ができるため継続して盤面に維持できるのも優秀である。これが他のこれらを採用するデッキと【アナカラーハンデス】を比較した際の優位点であり、強みではないだろうか。

これらの要素が複合したために「現環境に【アナカラーハンデス】が通りが良い」という評価が増え、実際に結果を残していると思われる。

次章では、これらを踏まえて【アナカラーハンデス】実際の立ち位置、及び今後の展望について考えていこう。


3.アナカラーハンデスの現在地

まずは環境全体で入賞しているアーキタイプを確認してみよう。

見ての通り、上位にある【JO退化】【樹食墓地ソース】【青魔導具】”曲通風”をプレイできなければリソース力・突破力で厳しいゲームになることが多い対面である。

逆に、入賞数としては下位になる【4C邪王門】【デイガライオネル.Star】【MDW】【天門ディスペクター】などのデッキにはハンデスとメタが強力に刺さるため、環境トップにワンチャンスを持ちつつ下位デッキを狩る、というのが現状の立ち位置と言える。

つまり、この環境に於ける上位デッキと下位デッキの分水嶺となっているのが【アナカラーハンデス】というデッキタイプなのである。

そして、これが本デッキの限界点でもある。というのも、環境上位がリソース力・フィニッシュ力という点で構築上の有利を軽量ハンデスに対して確保しているため、この差をひっくり返すことが難しい。

逆に言えばカツカツなリソースをやりくりする、または多色によって事故を発生させやすいギリギリな色配分のデッキに対してはハンデスの強みが存分に発揮される、というわけだ。

混沌の現環境において、この立ち位置は別に悪いわけではない。とはいえ、こういった上位と下位を明確に分けるデッキの存在はより環境上位の強みを補強することにもなる。

このデッキの躍進はそのまま、現状の混沌環境が最上位デッキの凌ぎあいへと移行するトリガーとなる可能性もあるのではないだろうか、というのが【アナカラーハンデス】に関する私の見解だ。

4.まとめ

要点をまとめると、このようになる。

・新弾のメタは環境に刺さっている

・それらの展開を継続しやすいハンデスは相性が良い

・環境上位に弱いが、下位にはとことん強いデッキ

こんな所だ。

今後の注目としては、元々【アナカラーハンデス】に強く、現在は後退気味の【赤単我我我】の動向である。ハンデスが増え続けるようなら、再び【赤単我我我】が勢力を盛り返すことも大いにあり得ると思われるため、今後注目するべきだろう。

それでは、長文になったがこれが私の【アナカラーハンデス】に対する考察である。

次回はいつも行っている入賞アーキタイプのまとめ(前回はこちら)でお会いしよう。ではでは。