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無題の詩

宇宙に行ってみたい
君は笑うだろうか
乗り換え案内なんて調べたりしないで
電車に乗ってみたら
それは行先の書かれていない真っ白な電車で
僕は知らないうちにそれに食べられてしまった
ミルク色の座席に腰掛けたら
本当にあたたかいミルクみたいな甘い香りがした
本当にあたたかいミルクだったのかもしれない
さみしい気持ちなんて知りたくなかったのに
君が隣にいると余計にさみしい
僕は泣いた
君と泣いた
君が泣き止んだとき
僕はまだ泣いていた
僕が泣き止んだとき
君は後ろ向きになって
そうして
水溜りを踏まないようにして
歩いた
僕は転んでしまった
転ばないように
一歩
一歩
歩いていたはずだったのに
君の手のひらに掴まることも出来なくて
自分の手のひらに爪が刺さって血が出た
涙はもう出なかった
星空がいっぱいに映った窓から
彗星が突っ込んできて
散らかった硝子が頬をなでた
寒い冬の夜の匂いがした
懐かしい匂いがした
観覧車の上から見た電飾みたいな星たちが
そこらじゅうに散りばめられていて
僕は君と食べたチョコレートを思い出していた
金魚鉢みたいな形の星をみて
アイスコーヒーの中に埋もれた氷みたいな星をみて
光が弱くなった星をみて
おまえたちも僕たちみたいなんだねって呟いた
気付けば夏みたいな温度になって
世界は全部真っ白になって
そう思ったら真っ黒になって
寒い冬の夜の匂いに恋焦がれながら
蒸発する

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