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エクワックスとPCUのさわりくらいの話(ダウンウェア周辺の話❸)

かなりメンズ向けの内容かもしれませんが「ファッションでいうミリタリーというジャンル」をわかるのに手助けになると思うので“こういうモノがあるよ“というだけでもわかっておきましょう。

○ 『エクワックス』について


これまで洋服の防寒のための“重ね着の仕方のお手本“として「アウトドアスポーツのレイヤリングシステム」について説明してきました。

防寒のための『最もシンプルで効果的な3段階の重ね着システム』です。

その際に米軍の『エクワックス』システムについても少しだけ触れました。
(日本は公式には軍隊は存在しないので実感ないですが、海外では軍服が一般の洋服やファッションに及ぼす影響力はとても大きいはずなので触れました)

「エクワックス」とは
軍での活動に対応できるように“レベル1〜レベル7“くらいにアイテムを分類して、「限られたアイテム(と言っても十何種類か確かある)の重ね着の組合せ」であらゆる寒冷地、極地まで対応するようにアメリカ軍が考案、システム化したモノです。

まず、
=ウィキペディアによるエクワックスの説明=


=アイテムの具体例とともに紹介してあるのでわかりやすい記事=



●軍モノとかミルスペックとか●

私たちファッションアパレル業界でも“本物の軍仕様“とか“ミリタリースペック“という単語をよく聞きます。
大体の場合がありがたがられて使われています。

なぜかというと“確かな品質・機能性“を裏付けする言葉として、とっても威力があるからだと思います。

特に今回のテーマのような防寒モノは(極地対応まで想定されている)

・命に関わる
・作戦行動の成否や目的達成に関わる

ような重要な装備です。

だから本気の本気で機能性(デザイン含め)を追求しています。

しかも軍の制服ですから全て経費でつくらなくてはいけない。
つまり軍事予算の一部を使ってつくることになります。
(売り物じゃないからつくるのにかかった費用は回収できない。全てコストということ)

当然お金はかからないほうがいいのでコストはできるだけ抑えます。

コストパフォーマンスも良くてしかもそこそこデザインもカッコよくて機能的。
(数量つくるのでスケールメリットはだいぶあるはずですが、、)

その辺の
“本気さ加減“とか
“機能美としてのデザイン“とか
“コストパフォーマンス“
なんかが裏付けられているモノとして

「本物の軍仕様」や「ミリタリースペック」という言葉がファッションアパレル業界でも、とても有り難がたがられてるのだと思われます。

※【注意】米軍ではダウンは採用していません。
フリースやプリマロフト(防寒中綿)などのダウンの代替品を同様の役割で使ってます。(レベル3やレベル7として。詳しくは上のサイトで。)
ダウンは水に濡れるとアウトなのと供給の安定性、コスト面的な問題かと思われます。

ついでに

「PCU」というのは
・「エクワックス」が通常の米軍用の基準なのに対して
・「PCU」は特殊部隊用に新しく開発されたさらに進化した同様のシステム
みたいによく書いてあります。

私も軍モノ全然詳しくないのでそんな感じで鵜呑みにしてました。

今回ちょっと調べてましたら、
実は「エクワックスシステム」は導入されてから随分時間が経って、いつの間にかだいぶ時代遅れになっていて、一時期「使えない装備」になってしまってたらしいです。
(普通に売ってるアウトドアブランドのアイテムの方が機能もよく、気が利いていて便利になってたぐらいだった)

それで2002年くらいから全面的な見直しがされて新しくできたのが「PCU」ということのようです。

この見直し時にアドバイザーになった登山家の人が元パタゴニアのレギュレーターシステムのアドバイザーで、これをきっかけにパタゴニアが米軍用にモノをつくるようになったそうです。

当初、特殊部隊用として試験的に運用され好評だったため今では全軍で第3世代の「エクワックス」としてグレードupされているというのが真相のようです。

だいぶメンズ用の蘊蓄になりましたが、自分的にも「そうだったのか」と思ったのでのせときます。


*   *   *   *

ちなみにファッションにミリタリーウェアが取りいれられるケースとして

・本物の軍からの放出品や古着
・ほんとに軍に納品してるメーカーから市販されてるほぼ本物
・軍モノのレプリカブランドがつくる精巧でキャッチーなレプリカ
・アパレルブランドが本物メーカーに別注したファッションアイテム
・アパレルブランドが本物をデザインソースにつくったファッションアイテム

というパターンがあると思いますが、エクワックスやPCUのアイテムはジャンルが防寒ということもあり、いずれも軍物の中でもかなり人気の高いジャンルです。ある程度把握しておくといいと思います。

気づかないうちに何かしら自分で買って着てることもあるかもしれないです。

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