『アランセーター』とはなんのことなのか? (ニットの名前の由来〜クラフトニット①)
画像はトラディショナルな編み地のローゲージなニットです。(実はカシミアですが)こういうニットを通常なんと呼んでいるか?
洋服屋さんの店頭ではアランセーターとかケーブル(縄編み)ニットくらいで呼ばれてると思います。
なので、このニットだと「カシミアのアランセーターのSサイズだして」みたいな会話が交わされていると思います。
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「アランセーター」とはケーブル編み(縄目)やハニーカム(蜂の巣)、ダイヤモンド(網目)、モス(苔)、ブラックベリーなど、独特の編み模様の組み合わせで全面が構成された画像のような特徴ある立体的な編み地のニットです。
ルーツはアイルランドのアラン諸島のハンドクラフトニットで、身の周りの生活に根付いたモノや大切なモノをモチーフにした多種多様な編み模様が存在します。(模様のルーツはケルト文化とキリスト教信仰の影響が強いと言われています)
現代までに考案された編み模様は100とも200とも。
(手編みでの編み方の説明も少しついてるのでどんな感じで編むのか?なんとなく理解してみてください。)
フルハンドクラフトのものは非常に手間暇かかり、目安、一日8時間編んで10日〜2週間でやっと一枚くらいらしいです。
「アランセーター」については実は情報が多く、日本国内では一番知られている「伝統的なハンドクラフトニット」かもしれません。
書籍も何冊か出ていて歴史やルーツなど、かなり詳しいことまでわかっています。
アランセーターについて国内の第一人者の方の書かれた解説です。
(この方はめちゃくちゃ有名でアランセーターといえば的な人です)
「アランセーター」を一番厳密に厳しく定義付けすると、
『アイルランドのアラン諸島(イニシマン、イニシモア、イニシイア島のいずれか)で、現地の編み手によって編まれたアラン編みのハンドクラフトのセーター』
というくらいのことになるようです。
=前述の第一人者野沢さんによるその辺の微妙な定義の解説です。一旦飛ばしていただいてもいいです=
この厳密な定義だとお馴染みのインバーアランもアランセーターの定義から漏れます。
「インバーアラン」は実はアラン諸島とは関係なく、1970年代にスコットランドで立ち上げられたアラン編みを駆使したハンドクラフトニットブランドです。(2018年からインド生産になったみたいです。)
ですが本物のアランセーター同様、クオリティの高いニットです。(アラン編みのハンドクラフトニットであることにはかわらないです。もう少し緩い定義にすればハンドクラフトのアランセーターといっても間違いではない)
20年前のモノです。クレイジーカラーのクルーカーディガン
その辺の事情を解説している動画ありました。興味ある方はどうぞ。
(伝説関係の説明も軽くあります)
英国、アイルランド、スコットランドでも『アイルランド、スコットランド付近で編まれたアラン編みのハンドクラフトニット全般』が手編みのアランセーターとして流通しているのが実状のようです。(ニット専門店でもいろんなモノが並んでいるらしい。)
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では冒頭の画像のカシミアのニットはなんなのか?
となるともちろんアランニットの模倣品です。
かといって「アランセーターのパクリじゃないか!」と怒る人は誰もいません。
「アランセーター」というのは超厳密な定義ではアラン諸島のみで編まれるハンドクラフトニットですが広義ではアラン編み模様を使った世界中のニット全般につかわれる一般名称だからです。
なんでこういうことになってるかというと
そういったクラフトニットの自由さ・曖昧さがあるので、世界中に流通したモノ(商業的に成功したニット)ほど世界中で模倣され、ニットの1ジャンルとして一般名称化しています。
「アランセーター」も世界で何度かのブームがあってすっかりニットの一つのジャンルとして定着して、個人からアパレルメーカーまで自由に模倣品がつくられています。
他の優れた有名ハンドクラフトニットも状況は同様です。
店頭で見る特徴的なニット製品にはだいたい「元ネタとなったクラフトニット(編み方、模様、編み地の特徴)」があります。が、定番的なニットとして自由に世界中で模倣されています。
ガンジー、フェアアイル、シェットランド 、ノルディック、ロピー、カウチン、
や、ペルー、、、、。
この辺は次回に。
(追記)
以前からコンピュータ編み機でも「アランセーター」は編成可能になってましたが、ハンドクラフトの編み地の立体感と複雑なステッチパターンはどうしても再現できてませんでした。
“みれば機械編みだとわかる“感じでした。(それでも結構なクオリティで既製品としてはなんの支障もないくらい)
そういう意味ではクラフトニットの中でも「ハンドのアランセーター」は“マシンでは再現できない“という特別感があったと思います。
が、ついに、こういうものが登場してしまいました。
米富繊維さんの「THIS IS A SWEATER」のアランセーター。
知らなくてみたらハンドニットとしか思えません。が、コンピュータ編み機での編成だそうです。開発に2年くらい?(記憶が曖昧)かかったそうです。(このニット専用の糸から開発して、何度も試作して編成プログラムを完成)
詳しくは下のサイトをみて下さい。
「気合いと情熱の、クレイジーな取り組みだ」と思ってしまいました。
お店で現物を初めてみた際にすごい驚いたので「えっ、マシンなんですか?これ」と結構な声量で言ってしまいました。
(同時にコンピュータ編み機の可能性にも驚きました。)
機会あれば是非、現物をみてみて下さい。
ホント驚いたので追記してしまいました。
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