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『アランセーター』とはなんのことなのか? (ニットの名前の由来〜クラフトニット①)


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画像はトラディショナルな編み地のローゲージなニットです。(実はカシミアですが)こういうニットを通常なんと呼んでいるか?

洋服屋さんの店頭ではアランセーターとかケーブル(縄編み)ニットくらいで呼ばれてると思います。

なので、このニットだと「カシミアのアランセーターのSサイズだして」みたいな会話が交わされていると思います。

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「アランセーター」とはケーブル編み(縄目)やハニーカム(蜂の巣)、ダイヤモンド(網目)、モス(苔)、ブラックベリーなど、独特の編み模様の組み合わせで全面が構成された画像のような特徴ある立体的な編み地のニットです。

ルーツはアイルランドのアラン諸島のハンドクラフトニットで、身の周りの生活に根付いたモノや大切なモノをモチーフにした多種多様な編み模様が存在します。(模様のルーツはケルト文化とキリスト教信仰の影響が強いと言われています)
現代までに考案された編み模様は100とも200とも。

(手編みでの編み方の説明も少しついてるのでどんな感じで編むのか?なんとなく理解してみてください。)

フルハンドクラフトのものは非常に手間暇かかり、目安、一日8時間編んで10日〜2週間でやっと一枚くらいらしいです。

「アランセーター」については実は情報が多く、日本国内では一番知られている「伝統的なハンドクラフトニット」かもしれません。
書籍も何冊か出ていて歴史やルーツなど、かなり詳しいことまでわかっています。

アランセーターについて国内の第一人者の方の書かれた解説です。
(この方はめちゃくちゃ有名でアランセーターといえば的な人です)

補足:】読んでられない人のためにめちゃくちゃハショッった内容です。

1900年代初頭にアラン諸島に伝わっていたガンジーセーターに1人の女性の編み手が独自のアレンジを加えます。
それがアラン諸島全体に広まり、進化、発展したのが現在のアランセーターの原型です。
この女性は一時期アメリカに移住していて、その期間にヨーロッパからの色んな国の移住者に色んなニットの編み方を教わっていました。
その後、アラン諸島に帰ってきて、アレンジをスタート。
なんと逆輸入的に始まったのがルーツです。これが1910年前後のこと。
この後1940〜50年代までがアランセーター進化の最盛期となります。

“何百年前から〜“というイメージあったかもしれませんが実は100年くらいの歴史。

「アランセーター」を一番厳密に厳しく定義付けすると、
『アイルランドのアラン諸島(イニシマン、イニシモア、イニシイア島のいずれか)で、現地の編み手によって編まれたアラン編みのハンドクラフトのセーター』

というくらいのことになるようです。

=前述の第一人者野沢さんによるその辺の微妙な定義の解説です。一旦飛ばしていただいてもいいです=


この厳密な定義だとお馴染みのインバーアランもアランセーターの定義から漏れます。

「インバーアラン」は実はアラン諸島とは関係なく、1970年代にスコットランドで立ち上げられたアラン編みを駆使したハンドクラフトニットブランドです。(2018年からインド生産になったみたいです。)

ですが本物のアランセーター同様、クオリティの高いニットです。(アラン編みのハンドクラフトニットであることにはかわらないです。もう少し緩い定義にすればハンドクラフトのアランセーターといっても間違いではない)

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(インバーアラン:モデル4A)

20年前のモノです。クレイジーカラーのクルーカーディガン

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(拡大)

『立体的なアラン編みで全面構成。アラン諸島で編まれるものより、均一化(クオリティコントロール:既製品として販売しやすいように編み模様が決められていてサイズ感・糸量も指定されている。手編みなので実は大変。)され、さらにこういうクレイジーカラーなどのデザイン的な融通もきいたので日本ではより流通、成功したようです』(クレイジーカラーは今できないかも?)


その辺の事情を解説している動画ありました。興味ある方はどうぞ。
(伝説関係の説明も軽くあります)


英国、アイルランド、スコットランドでも『アイルランド、スコットランド付近で編まれたアラン編みのハンドクラフトニット全般』が手編みのアランセーターとして流通しているのが実状のようです。(ニット専門店でもいろんなモノが並んでいるらしい。)


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では冒頭の画像のカシミアのニットはなんなのか?

となるともちろんアランニットの模倣品です。
かといって「アランセーターのパクリじゃないか!」と怒る人は誰もいません。

「アランセーター」というのは超厳密な定義ではアラン諸島のみで編まれるハンドクラフトニットですが広義ではアラン編み模様を使った世界中のニット全般につかわれる一般名称だからです。

なんでこういうことになってるかというと


・ニットの世界では手編みは無敵で手編みであれば真似するのも容易、なんでも編める。(編み方がわかれば熟練ニッターは編めてしまう。ハイゲージは編んでらんないので例外)

・いろんな地域の伝統的なニットも歴史の中で互いに影響し合い、教え合い、真似し合ってきているので見た目や編み方にそれぞれ特徴はあってもどこかで繋がってたりする

・クラフトニットの古くから伝わる編み模様や編み柄には著作権的なモノがないので誰でもなんでも編める(誰が考案したものかなどわからない)

(ニットの編みパターンに著作権はないと思ってたのですが、実は一部あるようです。が、ここでは省略します)


そういったクラフトニットの自由さ・曖昧さがあるので、世界中に流通したモノ(商業的に成功したニット)ほど世界中で模倣され、ニットの1ジャンルとして一般名称化しています。

「アランセーター」も世界で何度かのブームがあってすっかりニットの一つのジャンルとして定着して、個人からアパレルメーカーまで自由に模倣品がつくられています。

他の優れた有名ハンドクラフトニットも状況は同様です。

店頭で見る特徴的なニット製品にはだいたい「元ネタとなったクラフトニット(編み方、模様、編み地の特徴)」があります。が、定番的なニットとして自由に世界中で模倣されています。

ガンジー、フェアアイル、シェットランド 、ノルディック、ロピー、カウチン、
や、ペルー、、、、。

この辺は次回に。


(追記)
以前からコンピュータ編み機でも「アランセーター」は編成可能になってましたが、ハンドクラフトの編み地の立体感と複雑なステッチパターンはどうしても再現できてませんでした。
“みれば機械編みだとわかる“感じでした。(それでも結構なクオリティで既製品としてはなんの支障もないくらい)
そういう意味ではクラフトニットの中でも「ハンドのアランセーター」は“マシンでは再現できない“という特別感があったと思います。

が、ついに、こういうものが登場してしまいました。
米富繊維さんの「THIS IS A SWEATER」のアランセーター。
知らなくてみたらハンドニットとしか思えません。が、コンピュータ編み機での編成だそうです。開発に2年くらい?(記憶が曖昧)かかったそうです。(このニット専用の糸から開発して、何度も試作して編成プログラムを完成)
詳しくは下のサイトをみて下さい。

「気合いと情熱の、クレイジーな取り組みだ」と思ってしまいました。
お店で現物を初めてみた際にすごい驚いたので「えっ、マシンなんですか?これ」と結構な声量で言ってしまいました。
(同時にコンピュータ編み機の可能性にも驚きました。)
機会あれば是非、現物をみてみて下さい。
ホント驚いたので追記してしまいました。


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