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「ノルデックセーター」「ロピーセーター」(ニットの名前の由来〜クラフトニット③)


前回までで、私たちがよく耳にする「アランセーター」、「フェアアイルセーター」というのは
❶“それぞれアラン諸島とフェア島がルーツのクラフトニット(工藝ニット)“のことであり、
❷“定番ニット(セーター)の1ジャンル(種類)のとしての一般名称でもある“
という説明をしました。
また、「アラン編み」「フェアアイル編み」という編み方も世界中で広く知られ、ニットの定番の編み方として一般名称化してます。

このような“伝統的なクラフトニットが世界中で模倣され、販売されてニットの1ジャンルとして一般名称化してる“
という同様のケースが、まだまだあるので、もう少しだけ紹介していきます。

この冬こういった柄のセーターをいくつか扱ってました。

画像1
(フェアアイルと似た幾何学模様)

画像2
(ジグザク柄)

画像3
(ジグザグ柄;色展開)

画像4
(点描ドットとダイヤ型の網み目柄?でしょうか)

誤解を恐れずにいうと①〜④まで、全て『ノルディックセーター』と呼ばれがちです。(正しいかどうかちょっとあやしい)

【ノルディックセーター】(北欧、スカンジナビア全域)


「アラン」や「ファアイル」同様、超メジャーなニットの1ジャンルですが、厄介なのが、この「ノルディック」という単語が曖昧すぎて、ルーツとなるクラフトニットの定義さえあやふやなことです。

そのせいで通常使われている「ノルディックセーター」という名称に至っては、どういうものを指してるのか全然はっきりしません。
ネットや雑誌を見てても「っぽいもの」ならなんでも「ノルディック」と書いてあって、いったいどれが本当の『ノルディックセーター』なの?と思ってしまいます。

「ノルディック」は確認してみると「北欧の」という意味なのですが、どうやらかなり広い範囲をさす言葉で、「セーター」のことだけで考えてもノルウェー、スウェーデン、フィンランド、アイスランド、デンマーク、あたりでつくられているクラフトニットはほぼ「ノルディックセーター」の範ちゅうに入ってしまってます。

それぞれの国には本来、地場のニット(産地)がそれぞれがあります。

例えば
・セテスダールコフタ、ファーナ、セブル(ノルウェー)
・ダーラナ、ハーランド、ゴッドランド(スウェーデン)
・ナットイヤー(デンマーク)
・コルソナス(フィンランド) 
・ロピー(アイスランド)
などなど、、
のセーター(というより主に産地名)があったりしますが、日本でこのレベルで違いを認識してるのは主にハンドクラフトニットファンとその業界の関係者くらいのようです。

※書籍や画像でそれぞれのセーターを見るとそれぞれ特徴があるのですが、反面“どれもどこかでみたことあるような“という印象も受けます。
おそらく柄・柄だしの仕方にどこかしら共通点があり、アランやフェアアイル同様、代表的なものは世界中で真似されてるからだと思います。

なぜ、「ノルディック」というこんなに広く曖昧な範囲を指す言葉を使ってるのでしょうか。

「ノルディック」とほぼ同義で使われてる「スカンジナビアン」という言葉があります。スカジナビア半島中心の周辺文化圏一帯を指していて、厳しい気候条件や環境も似ていて歴史的にも深いつながり・関わりのある地域です。

実はこの文化圏の国の国旗には「北欧(スカンジナビア)十字」が共通で使われていて、デザインがかなり似ています。それぞれの国と国旗、地理関係を下のサイトの地図で確認してみてください。

説明はとてもできませんが、ヴァイキングの時代から近現代に至るまでの北欧の歴史が「スカンジナビア十字の国旗」を使う広範囲に渡る同文化圏の国・地域の深い関係性を形づくったみたいです。

「ノルディック」がさしてる範囲、広すぎますけど、しょうがないのかもしれません。

この地図を見る限り、

通称「ノルディックセーター」というのは
結局、“北欧文化圏でつくられるセーターを大まかに大きく捉える“ことでOKなようです。

「ノルディック柄」というと
雪の結晶、トナカイ、もみの木、ハートなどをモチーフとした幾何学柄、
山を表すジグザグ柄、XO柄、点描柄、など
が思い浮かびます。

“同じような柄、編み地、技術が上記の国・地域には共通で見られ、さらにそれぞれの産地には独自に発達した編み地、柄、技術もある“くらいにみておくのが正解に近そうです。
(ちなみにシェットランド、フェア島も北海の海上交通の要所だったのでスカンジナビア文化圏の影響を大きく受けていてニットの柄も似てます。
ニット産地地図みたいなものが載せれたら話は早かったのですが、残念ながらみあたらず、、)

上記①〜④の画像のような「っぽい」柄だとなんでも「ノルディック」と呼ばれがちですが、どうやらあながちまちがってないみたいです。

下はノルウェー(南部)の『セテスダールコフタ』のニット画像です。
(現地生産のものかはわかりません)
ボタンのかわりに使う装飾加工した金属フックとチロリアンテープ調の刺繍テープを装飾に使うのが独特のニットですが、編み地の柄は典型的なノルディック柄です。
https://shop.grapefruitmoon.jp/?pid=154955770

ということで、『ノルディックセーター』のさす範囲はもともと広く曖昧なうえ、それごと一般名称化もしてるため、余計にわかり辛いようです。
(広い範囲のものがさらに世界中に普及し模倣されている)

「ノルディックセーター 編み柄 伝統 画像」とかで検索かけると色んなタイプのニット画像がでますので一度試しに見てみてください。

【ロピーセーター】(アイスランド)


ノルディックセーターの一つということになりますがアイスランドの「ロピーセーター」(アイスランドは昔はノルウェー領だったり、デンマーク領だったりしました)

この冬ちょっと流行ってたと思います。
上記①〜③の画像のニットも「ロピー」っぽいデザインだったので紹介します。

いわゆるノルディック柄と言ってもいい幾何学柄ですが、『丸ヨーク』というつくり方とオリジナルは『アイスランドシープの甘撚りの太い糸』で編まれているのが特徴です。
(アイスランドの羊は外側の毛がシャリン、シャリン(内側は柔らか)でわざとその毛を混ぜて使って耐久性、防水性を上げてる糸などがあるそうです。)

『丸ヨーク』というのを上記サイトでしっかり説明してくれてますので是非読んでください。

布帛(織物)でゆうキャップショルダーみたいなデザインです。

よそ様サイトですがわかりやすかったので。(正直ニットとはあまり関係ないですが、流行らないと見かけないデザインで今ちょこちょこ見かけるので参考までに載せました。「キャップショルダー」おぼえときましょう。)

○             ○             ○               ○


機械編みでいうと“求心シングルジャカード“ということになります。
首元から放射状に広げながら一続きで編むシングルジャカード柄が特徴です。
難しいのはこれが「ロピー」だけの特徴か?というとそうでもないというところです。「丸ヨーク」(求心柄)のシングルジャカードは他の地域でもみられます。

ちなみに画像①〜③は実は丸ヨークではありません。
それっぽくつくってありますが、ホントはラグランスリーブです。

画像8
(ジグザグ柄;裏目)

②の裏側です。両袖のつなぎ目あるのがわかると思います。丸ヨークっぽく見えますがラグランです。(実はこのパターン多いです。丸ヨークはキャッチーですが面倒なのかもしれません)

次回にまだ少しだけ続きます。

<まとめ>
・一般名称化してるクラフトニットの中でも「ノルディックセーター」が指す範囲は特に広く定義も曖昧。(歴史的なスカンジナビア文化圏一帯を指す)

・その中でよく見るロピーセーター(アイスランド)調の首元から放射状に柄だししたものを『丸ヨーク(求心柄)』という

・「ノルディック調の求心柄」のセーターは世界中ですごくたくさんつくられている大定番ですがもともとのルーツは北欧のあたり。

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