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街着の防寒アウターについてとダウンウェアブランドについて〜ダウンウェア⑧〜


人類の最も原始的な防寒手段の一つは衣類の重ね着です。
これまでその“重ね着の仕組み“と“防寒効率のいい重ね着の仕方“を説明してきました。

が、前回は
“とはいえ世の中の防寒アウター(特にタウンユースのもの)は一体型のもの(壁と断熱材が一緒になっていて、単品で成立する)が多い“
という内容でした。

何でタウンユースのアウターは一体になってるものが多いかというと、(山や寒冷地で運動するわけじゃないので)

・重ね着するのは脱いだり着たりメンドーですし、携帯するのもかさばる

・タウンユースでそこまで天候が変化したり、体温調節が必要なほど活動したりしない

そして何といっても

・ファッションアイテムですから防寒効率だけ追求する意味はない
(それぞれの素材の良さやデザイン性・トレンド・伝統的なアイテムのディティールを楽しむもの)

街着のアウターで重ね着が前提のモノなんてメンドーだし、デザインが限定されがちで他のアイテムとシックリこなかったりで、あまり必要ないからです。

(タウンユースなら室内と屋外の2パターンの想定で十分なので、外気温に応じた防寒レベルのアウターにその都度かえていけばいい)


◎メルトンやフランネルなどの縮絨ウールはそれ自体の厚みや繊維密度で(壁✖️断熱)の役割を担ってます。

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(アンルート フラノ風ジャージ ガウンコート:これはジャージですが、多少防寒効率が落ちても、ウールの素材感、上品さ、温かみなどが大事。)


◎店頭に並ぶダウンウェアもほとんどが一体型アウター(壁✖️断熱材)です。

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(アンルート リップストップナイロン 中綿ダウンのガウンコート:一体型でも“断熱材を壁で覆う“このやり方が防寒効率がいいし、軽い) 

ということで、ファッションアパレル店頭の防寒アウターはわざわざ重ね着する前提でつくられてるものはあんまりありません。

ではなぜ防寒や重ね着について長々説明してきたかというと

・『そもそも防寒ってどうやるのか?効率のいいやり方は何か?』を説明するのに重ね着システムの理屈がとてもわかりやすい

・ダウンが重ね着システムでいうと断熱材にあたる素材でしかも能力がすごい高い

・店頭のダウンウェアも重ね着の理屈を考慮した設計(壁✖️断熱)になってる

ということをわかっていただくためで、さらに

他のアウターと比べてダウンウェアがなぜ評価が高いのか?

「糸にできなくて、使い勝手が悪い特殊な素材にもかかわらず重ね着システムの断熱材として利用するにはめちゃめちゃ効果的でしかも他の素材に比べて圧倒的に軽いアウターがつくれる」

ということをわかっていただくためです。

何しろダウンウェアを一枚着てしまえば数十秒で『暖かく』なりますし、アウター着てる自覚がないくらい『軽い』です。

一番最初に説明しましたが、『暖かくて軽い』の意味がより実感いただけているのではと思います。


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私達はファッション屋さんなので、「トレンド、流行り、新鮮さ」なんかで扱うアウターのジャンルがシーズンでどんどん変わっていきます。

そんな中

『一昔前にいろんなダウンブランドができて一気に商品バリエーションが充実し、トレンドのピークを迎え、トレンド的にはピークアウトしたものの、能力の高さから未だ防寒アウターの主役に居続けている』のが“ダウンウェア“です。

今、店頭で見るダウンのブランドは

●もともとがアウトドア・スポーツブランド
モンクレール、カナダグース、ピレネックス、水沢ダウン(デサント)、ノースフェイス、マーモットなど

●タウンユース・デイリーユース専用のファッションダウンブランド
デュべチカ、タトラスなど

●ダウンウェアを代表的なアイテムとして手がけてる老舗アウターブランド
ウールリッチ、ヘルノなど

(どのブランドも背景がしっかりしていて品質は保証されています)
な感じでわけられますが、

それぞれの商品自体はタウンユースダウンとして多少アレンジされてるか、最初からファッションアイテムとして企画デザインされているもので、どちらにせよ概ね街着用ダウンになります。


=スポーツブランドの代表的なダウンブランド、デサント水沢ダウン=

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(本格的なスペック満載なのにオルテライン“特定のシーンや領域を想定してない(タウンユースもあり)“という位置付け)

=タウンユースダウンウェアがメインアイテムのファッションブランド、タトラス=

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(画像の商品はキルティングステッチをかけたナイロンの質感、ダウンのモコモコ感をデザインとして取り入れ、完全に街着ダウンとして企画されてます。山とかには全然むいてなそう)

=ダウンボール自体の供給元でスポーツダウンウェアブランドだったピレネックス=

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よりシティユース目的でデザインされたブロウ

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外付けのフラップなしパッチポケット付きです。アウトドアでは雨雪が防げないのでほぼあり得ないポケットです。
手ブラででかけられるようにと収納容量があって出し入れ簡単な大きいポケットを付けたそうです。
フードを取り外して入れておくこともできます。

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どのダウンウェア(オリジナルも含め)にも言えることは“出所・生い立ち“が確かで品質を疑う必要はなさそうだということです。

そのせいもあって有名ブランドの街着用ダウンは「重ね着システム」の極寒冷地対応レベル並みの能力が高すぎるくらいのモノが多いかもしれません。

だから一体型のダウンウェアの弱点を強いてあげるなら

「いざ暑くなるとオーバースペックになりがち、微妙な調整きかない、かさばる」

ということになりますが、結局そんなデメリットが気にならないくらいメリットが感じられるのがダウンウェアです。


<まとめ>

・防寒には理屈にあった重ね着をするのが効果的だけどファッションアイテムのアウターは「壁✖️断熱」が一体型のものが多い

・街着で重ね着前提のアイテムは色々メンドーだし、そこまでマメな体温調整必要ないし、コーディネートも限られる

・ダウンウェアもタウンユースはだいたい一体型

・店頭で扱っているダウンウェアブランドはどこも品質が高い

・そのせいで街着用ダウンはオーバースペックになりがち(能力が高くて)

・ダウンウェアの最大の強みはやはり『暖かくて軽い』こと




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