元カノに会うことにした話

私が嫉妬心で爆発するたび、彼は、彼の誠実さで一生懸命に私とコミュニケーションを重ねようとしてくれた。ポリーであることは大前提なので、彼は自分がリズを大好きであることを謝るわけではない。それは私が求めていることでもない。彼は、ポリーである自分として、愛する人が傷ついているそのことに、心から寄り添おうとしてくれていた。

私も自分自身がある部分ポリアモリーなので、彼の言わんとすることはわかる。私は心のどこかでは、リズがいることが、彼の人生の幸せや心の安定につながっていることが、よくわかっていて、彼が幸せであることは私にとっても好ましいことだ。ある部分、彼を幸せにしてくれてありがとう、というような気持ちもある。そして私と共にリズも大切にできてしまう彼だからこそ、大切なサンフランの彼のいる私としっかりと向き合ってくれようとしていることも客観的に理解していた。そしてなにより、私は自分の意志で、彼と向き合い、つながりを継続しようとしている。なのに、たまにちょっとしたきっかけで、嫉妬で狂いそうになる自分が心底、いやだった。

彼は、引き続きできる範囲で正直にリズのことを話したいが、その一方、私の混乱に向き合うたびに、彼も傷つき、どこまでどう伝えたらよいのか、悩んでいる様子でもあった。とても悩んだ様子で、エリーにとってのリズは、ハリーポッターの映画に出てくる ”you know who” みたいだ、と言われた私は、ふふっと笑ってしまった。

そうか、リズは私には想像の中の生き物。だからおどろおどろしくなる。本人に会ってみたらいいんだ、とあるとき思った。何がどうなるかわからないけど、会わないより会った方がいい。少なくとも “You know who”ではなくなるし、どっちに転ぶにせよ、何かにつながるだろう。

彼にその気持ちを伝えると、彼は美しい目をキラキラさせて喜んだ。本当に?僕は初めから、エリーとリズは気が合うと思ってたんだ、こんなワンダフルなことはない、と、あっという間に予定を決めて、3日後に会うことになった。マリブピアにあるカフェで7時に待ち合わせ。リズがロサンゼルスに滞在している時間も限られてるから、今回何かがあったら、修復は難しい。

私は戦闘に行く兵士のような気持ちだった。女として、絶対に引け目を感じては、いけない。半休を取りデパートで何着も試着して、キッパリ明るい、ロサンゼルスの夏にぴったりなサマードレスを買った。それから、そのドレスにぴったりのピアスとブレスレットとネックレスを買った。ネイルサロンでひまわり色のアートをお願いした。

リズは、背も鼻も高く、聡明で、周りを明るくするような笑顔が美しいアルゼンチン人。しっかりと観察し、冷静にコミュニケーションし、後悔のないように、と思った。リズが思ったより攻撃的に出てくるシナリオ(あんた後から出てきて私の彼をとらないでね、パターン)、リズが素晴らしすぎて完敗するシナリオ(こんな人じゃ相手にならない、もう彼ともさようならしよう、パターン)、意気投合しすぎて親友になるシナリオ(一番望ましい)、リズと話し合いになるシナリオ(お互い嫉妬人が最小に抑えられるよう取り決めをするようなパターン)などなど、頭の中で何度もシミュレーションを重ねた。

自分の気持ちも、リズの気持ちも、彼の気持ちもどう動くか、全く見当がつかない。

戦闘に行く兵士の私は、完璧な準備でその日を迎えた。

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